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□日曜日の憂鬱
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「あー!!どうしよう!」
 アパートの一室でウキョウは目覚ましを片手に、飛び上がるように布団からはい出した。
 時計の針は十時半を指している。
 彼女と駅前で約束したのが十時。
 …遅刻確実…ではなく、完全に遅刻だ。
「ああ、彼女に電話しなくちゃ!!」
 謝罪と連絡を取ろうと携帯を開く。
 彼女が設定した青空の待ち受け画面に表示されているのは三件。着信が二件。メールが一件。全て彼女からのもの。
 メールは先ほど届いたようだった。
「俺、なんて最低なんだ…」
 自身の失態に嘆くように呟きながら、メールを開く。


 おはようございます。
 電話がつながらないのでメールをしました。
 今、どの辺りにいますか?

 ご迷惑だとは思ったのですが
 ウキョウさんの撮った写真が早く見たいので
 ウキョウさんのお家に向かっています。

 マイ



「い、家?!とりあえず、着替えなきゃ!」
 震える手を押さえつつ携帯を開いたまま、机に置く。
 机の上には無数の写真。
 昨晩、彼女にあげる写真を選ぶのに散々深夜まで悩んだあげく、結局全部あげることにしたものだった。
 その机の隣でウキョウは素早くシャツとズボンを着ていく。
 その間にも時計の針の動く音が聞こえ、時間がウキョウを追いつめる。
「三つ編み、うまくできないよー…」
 鏡に向かって泣きそうにながら、ウキョウは歪んだ三つ編みを形成していく。
 黄緑の綺麗な色の髪は寝癖が酷く、見ていられない。
 いっそ、寝癖なんてない世界に行きたい。悲痛なウキョウの心とは裏腹に来客を知らせるチャイムが鳴った。
「はい、はーい!」
 きっと彼女だ。ウキョウは焦る心を抑え、玄関へと向かい扉を開ける。
「うわっと!」
「あっ、ウキョウさん。いたんですね…よかった。おはようございます……?」
 マイはにこやかな笑みを浮かべるも、ウキョウの姿を見て笑顔が曇った。
 はだけたシャツ、歪んだ三つ編みに寝癖のついた髪。焦るウキョウの顔。
 それは誰が見ても完璧に寝起きだとわかる姿。
「…ごめんなさい。昨日、お仕事忙しかったんですね」
「あ、いや…ご、ごめん!!」
「……」
「………」
「…ウキョウさん。とりあえず髪直しましょう。今、部屋に入っていいでしょうか?」
 彼女の冷静な言葉にウキョウはハネた髪の毛を押さえる。
「ど、どうぞ…」
「おじゃまします」
 この無様な姿と待ち合わせをすっぽかした言い訳が、いくつも頭を駆け巡っていくのを感じた。





日曜日の憂鬱



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