a short story

□a birdcage
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「あの、イッキさん?」
 マイを拘束して、もう一週間になる。
 ベットの隅に手首を縛り、身体の不自由も気にする様子も抵抗する様子も見せないでいた。一週間も、イッキのベットの上に、だ。
「ん?どうしたの?」
 理由はわかっていた。
 イッキは彼女自身を好きだから、それだけ。
 だが、彼女が無防備なままほかの男と接したりしているのを見るうちに嫉妬に駆られ、イッキの理性が保てなくなりそうになった。そこで自分の理性と嫉妬を押さえるためにマイを拘束して、側に置くことにしたのだ。
「水が飲みたいのですが……」
「うん、いいよ?」
 イッキは水の入ったペットボトルを右手に持つとふたを開け、自分の口に含むと彼女の口元へ水を運んでいく。
「………、このくらいで良いかな?」
「ん……」
 左手を肩に置いているためか、自然と手がマイの首へ向かう。片手を塞ぐ、飲みかけのペットボトルはそばの棚の上へ。
 そっと首筋に両手を這わせると一瞬、彼女は身じろいだ。
「イッキさん」
「何?」
「手首を縛っている紐をとってもらえないでしょうか?」
「……紐?………いいの?そうすると、君の身の危険が危ないんだけど。」
「……?」
 一瞬、マイはイッキの聞き返しの意味を分かっていないようだった。
「………それとも、僕の理性を試してる?」
 今まで本気で人を愛したことのないイッキは、本気になった自分の内面の奥にある本能という、凶暴性を含んだ狼に恐怖を覚えていた。
 困惑するイッキにマイは微笑みかける。
「…………」
「私はすべてを受け入れるから」
「いいの?…僕、押さえられないかも」
「……はい、私は大丈夫ですから」
 この暗い部屋の闇とやわらかなマイの表情。恐る恐る、ゆっくりと抱かれる肩。
「好きだよ…マイ……壊したいくらいね」
 ゆっくりと、二人はシーツに堕ちていった。





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