a short story
□Deja vu
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8月31日。八月最後の、日。
ウキョウにとって、何回来たか分からない日。
「ウキョウさん、あなたは……」
マイの家の中で、同じ日を迎えるのが恒例になっていた。
それは今も、このあと起こることも、ウキョウもマイもそれを分かっていた。
「きみはもう、俺を見てはくれない」
「ええ」
ゆっくりとマイの頭に乗せられるウキョウの手。お決まりの動作。
ただ、前回とは違い彼女の頬に伝う涙を、ウキョウの目濁った瞳は捉えなかった。
「おやすみ。痛くはしないから…俺にすべてを預けて?」
また、今までをすべて知ってしまったマイへのお決まりの言葉を並べたてて、ウキョウは笑う。
「じゃあ、また別の場所で」
そして、マイの記憶はゼロになった。
*
いつもの、何回目かわからない密かな逢瀬。
彼女自身そう思ってはいないだろうが、ウキョウは密かにそう思っていた。
世界が変わり彼女がウキョウを相容れなくともすっと、ウキョウは想っていた。
「そうだ。ウキョウさんずっと思っていたんですけど私、ウキョウさんと以前から…」
マイの目がウキョウの瞳を捉える。ウキョウの目の前には何も知らない、マイがいるはずだった。だったのに。
「マイ、」
「会っていましたよね?」
確実に何かが狂い始めていた。
Deja vu