a short story

□He often pretend to be bad.
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 グシャグシャになった安いホテルのベットの上。
 目の前にいる玩具の胸の膨らみに肌を寄せて、ただ己を高めていく行為にイッキは耽っていた。
「   !」
「……」
 汗ばむ体に、跳ねる体。
 玩具が何かささやいてきたが、イッキには雑音でしかない。
「愛しているわ、イッキ」
 不意に玩具と目が合う。
 愛おしさと熱情で揺れる瞳には二つの青い瞳が映りこんでいた。
「…ふふ」 
 馬鹿らしい。イッキから思わず笑いがこぼれた。
 この女は青い目を持った自分自身ではなく、青い目に恋をしている。それを気付いて気付いていない女は、イッキにとってこのようなただの玩具でしかなかった。
 自分自身が愛されてこの行為に至っていると思っているのか。それとも、今こうしているお前でなく、あの子がいいと言ってもこの玩具は理解してはくれないだろうか。どちらにしろ、あまりにも自分と玩具の思い違い感情が滑稽で笑いが止まらなかった。
「    」
「     」
「    」
 次第に雑音が増えていくのを感じながら、イッキの意識は闇にとけ込んでいった。


     *



「あ、マイちゃん」
「イッキさん」
 じりじりと汗ばんでいく、昼下がり。
 いつものように女子に囲まれたイッキが学校の講堂で、お弁当を持ったマイの姿を見つけたのは偶然だった。
「え、イッキ様ー!」
「ちょっとごめんね」
 軽く取り巻きをあしらい、お決まりの定位置のように彼女のそばに寄った。
「マイちゃん、これからご飯?」
 オレンジと赤の花柄のかわいらしいお弁当箱を指してイッキは聞いた。
「え、あ…サワちゃんと」
「ふうん、じゃ僕も混ざっていいかな?」
「……、」
 イッキの発言にこの前のキス未遂を思い出したのか、黙り込んだマイの鮮やかな目が数回閉じた。
「…変なことをしないなら」
 おずおずとイッキの瞳に目線を合わせ、真意を探るかのように見つめてくるマイに思わずイッキは笑いが零れた。
「いやだなあ、僕ってそんなに信用無かったっけ?」
「はい」
「やっぱり手厳しいなあ…ほらマイちゃん、邪魔してこないうちにいこうか」
 どこからこの目に敵わない精神が生まれるのだろうか。イッキの頭の中は次の玩具探しより、彼女を手中におさめることに意識を傾け始めた。 




He often pretend to be bad.


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