reborn

□オレンジブリュレに口付けを
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※パロディ設定(ご主人雲雀とメイドハル)



 私はたぶん彼が居なくても生きていける。私みたいにある程度働けるメイドを欲しがっている金持ちは、それこそ腐るほどいるからだ。むろん私も「夜のお仕事」までするつもりはないけれど、それでもいくらか買い手はいるだろう。だから辞めようと思えばいつでも辞めてしまえる。名残惜しさも何もなく身一つできっと。
 でもそんなことを考える時、たぶんきっと彼は、私無しでは生きていけないんだろうなぁとぼんやり思う。私の存在は彼の生活ペースにすっかり組み込まれていて、一つのピースであり歯車だ。欠けると生活がままならなくなる、重要な存在。それが私。一介のメイドでしかない私が、だ。それは少しばかりの優越感と満足感、敢えて付け加えるならばエクスタシーと言う名の快感を私に与え、考えるだけで笑みが零れた。

「ご主人様、お茶が入りました。」
「ああ、そこに置いといて」
「はい。」

 山のように積まれた書類とにらめっこして、私の入れたブラックコーヒーを啜る彼の名は雲雀恭弥。高台に構えるこの大豪邸の主人であり、有力な貿易商を営む「ご主人様」だ。そして私はそのご主人様に仕えるしがないメイド、三浦ハル。得意料理はハンバーグと肉じゃが。何故ってそれはご主人様の好物だから。ご主人様は料理長の作る完成された芸術作品のようなフレンチよりも、私の作る素朴な料理がお好みのようだ。最近では私がディナーを作ることになっており、料理長はそんな私をよく思っていない。気にしてないけど気にくわない。そして自分で言うのもなんだけれど、ご主人様には随分と気に入られたものだ。
 最近ご主人様は私を抱き締めて囁くように泣く。普段はクールで仕事の鬼な彼のそんな姿を知っているのは私だけで、私はそんな彼を愛しく思いながらも心の奥底では突き放してみたいとも思っている。突き放されて絶望して怒り狂って苦しんで、そしてもっと私を求めて。痛いくらいに私だけを求めて。そんな考えが私の脳を支配して麻痺させるのだ。

「ハル」
「はい、ご主人様。」
「膝を貸して」
「はい、どうぞ。」
「ハル」
「はい、ご主人様。」
「キスして」
「それは駄目です。」
「どうして」
「規則ですので。申し訳ありません。」
「主人は僕だよ」
「それでも駄目です。」

 不満気に瞳を閉じた彼は私の膝で安心して眠る。まるで小さな赤子みたいで私の支配欲はむくむくと膨れ上がり、私が居なくなったらホントにこの人はどうなるんだろうと嬉しくなる。「キスして」だって。笑っちゃうわ。可笑しくて愛しくて阿呆くさくて、もういっそのこと泣けてくる。私はあなたなんか居なくても全然平気なのよと囁いてやりたい。傷付くだろうか。またいつものように泣くだろうか。泣いて私を犯すだろうか。それならそれでいいと思ってる私はひょっとするとMかもしれない。

「ご主人様」
「…なに」
「好きですよ。」
「…君ってホント分からない。メイドならメイドらしく僕の命令だけを聞いてればいいのに」
「規則ですから。」

 にこやかに微笑んでむくれた彼の頬を捉えて口付けすれば、イニシアチブを握るのは私だと信じて疑わなかった。
 辞めようと思えばいつでも辞めてしまえる。けれどもちっともその傾向を見せないのは結局は私が彼を望んでいるからだろう。きっと彼のことが好きで好きで仕方ないのは私の方だ。とんだ天の邪鬼。笑ってしまう。
 とりあえずはご主人様の損ねた機嫌を直して頂くために、料理長におやつでも頼もうか。そして私が食べさせてあげようかしら、なんてね。













オレンジブリュレに口付けを
(おまけに夜のご奉仕もいかが?)


*

ファン太郎さんリクの主従関係なヒバハル…です。
どうしてこうなった。
メイドハルってドジっこではひぃ!じゃないのかみたいな。
すいません、私の書く三浦さんはいまいち純粋になってくれません…。

ファン太郎さん、なんだかSなハルになってしまいましたが貰って下さると嬉しいです^^;

リクエストありがとうございました。
これからも梅擬きをよろしくお願いします!

20110716 いもこ

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