inzm

□はい、チーズ!
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 基本的に私は写真を撮る側の人気でして。別に撮られるのが苦手とかではないけれど、気が付けばキャラバンでもイナズマジャパンでも、私は情報収集兼写真係だった。(文句なんてない。綺麗な写真が撮れたり、みんなの笑顔が見れるのは嬉しいから。)
 でも、でも一つだけ。一つだけ我が儘を言ってもいいのなら。

「たっ、立向居くん!」
「あ、音無さん。どうしたの?」

 振り返った彼はいつも通りの優しい笑みを浮かべて私を見る。それだけで胸がいっぱいになって鼓動が速くなった。
 どきどき、どきどき。近付けば伝わってしまうんじゃないかって思うくらい私の心臓は煩くて、だけど彼との距離が埋まることをこれ以上ないくらい最大限に喜んでいた。

「あ…あのね、FFIも終わったから、記念にみんなの写真を撮ってるんだけど…」
「そうなんだ!」
「そ、それでね、」

 言え、言うんだ音無春奈13歳。今伝えなきゃ、彼は近いうちに行ってしまう。彼の故郷へ。中学生の私たちでは簡単に行き来なんて出来やしない、恨めしいほどの遠くへ。
 震える喉を奮い立たせて、今勇気を出さなくてどうする!と気合いを入れ直す。そしてつい俯きがちになる顔をあげて、彼を真っ直ぐに見据えた。(私今きっと、顔が赤いんだろうな。)

「…わたし、」
「うん?」
「………た、立向居くんの写真を撮りたい!」

 …あ?あ。…あ!
 間違えた。間違えた間違えた間違えた!(立向居くん「の」じゃなくて「と」なのに!ああもう、恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。)
 伝える分には伝えたけど、まさかこんな所でドジ踏むなんて。

「オレの写真…?うん、それは全然構わないけど…」
「あ…うん、ありがとう」

 今さら間違えました、なんて言えるはずもなく。あーあ、最後の最後まで私は写真係でした。自分が写るのは、優勝記念に撮った集合写真くらいかな。もうこうなったらヤケだ。とびきり素敵に立向居くんの写真撮って、自分用に焼き増ししよう、そうしよう。(お兄ちゃんにはバレないようにしなきゃね。)

 立向居くんは前髪を少し整えると、目が合ってくすりと笑った。ああ、私が一番好きな笑顔。…違う、なんだかいつもより雰囲気が大人っぽい気がする。(立向居くんってこんな笑い方するっけ。少し、どきどきする。)

「…あのさ、音無さん」
「へ?う、うん」
「…オレは音無さんと一緒に写りたいなぁ、なんて」
「……へ!?」
「あ、ダメだった?」
「そんなわけない!ってゆうかむしろ嬉し…って違う!違うから!」
「はは、音無さんてば可愛い」

 、頭が爆発しそう。(立向居くんってこんなにストレートな人だったかしら。もっと純朴でへたれで奥手で、ああ。思考が熱で浮かされて追い付かない。)
 でも、でもとりあえず一言言ってやらないと気がすまない。(照れ隠しってバレバレなのは見ないふりだ。)

「…立向居くん、」
「ん?」
「立向居くんって、いい性格してる」
「はは、ありがとう。」

 そう言って笑った彼は、今までで一番良い笑顔を浮かべていた。(癪だからその笑顔、頂きます!)












はい、チーズ!
(今度は会いに来て。写真だけじゃ足りないから。)



*

johnさんリクの立春です。シチュ指定がなかったため好き勝手に書かせて頂きましたが…立向居がなぜか腹黒系になってしまいました(笑)

johnさんのお気に召して頂けたら幸いです^^;

それでは、リクエストありがとうございました!

20110710 いもこ

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