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□吹春で七夕小説
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※7/7までの期間限定フリー小話です。お持ち帰りもご自由にどうぞ。


<吹春で七夕小話>


覚えている限りで一番最初にそれに書いたのは「とある少女向けアニメの主人公になれますように」だったと思う。
その何年か後には「お父さんとお母さんに会えますように」、これはその時の物凄く困った顔をしたお兄ちゃんの顔も含めてはっきり記憶している。
その次の年は「お兄ちゃんに会えますように」で、そのまた次の年はまた同じ願い事をしようとしてやめた。

結果的にその願いは何年越しかで叶ったわけだから、七夕の神様もときどきは願い事を叶えに来てくれているのかもしれない。
はたして七夕の神様というのがいるのかいないのかはわからないけれど。


駅前の商店街の大きな笹を見ながらふとそんなことを思い出した。
ちなみに、今年はまだ短冊に願い事は書いていない。
後で彼と一緒に書きに行こうと、駅まで小走りする。

「やっぱりこっちは暑いんだね」
改札前に着くと、わたしより白い肌の吹雪さんはふわっと笑った。


七夕の神様が気を利かせて「吹雪さんに会えますように」と書く前に会う機会をくれたのかはわからないけど、吹雪さんにこっちで用事ができて北海道から出てくるついでに今日会えることになった。
織姫さまと彦星さまほど長く会ってないわけじゃなかったけど、それでもずっとずっと会いたかったからやっぱり会えて嬉しい。

「キラキラの飾りが街を埋めると夏って感じですね」とわたしが言うと吹雪さんは北国の人らしく「僕は本当の夏は七夕より少し後って感じがするけどきれいだね」と微笑んだ。

わたしはたぶん今、世界でいちばん幸せだ。


「どうして七夕の日って毎年曇りなんですかね」
織姫さまと彦星さまは無事に会えるかなぁ、と薄暗くなり始めた曇り空に向かって言った。
雨が降らなければ二人は会えると聞いたことがあるけど、それでも一度くらいその幸せの象徴の天の川を見てみたいと思う。

わたしの言葉に、吹雪さんも空を見上げて少し考えてからこう答えた。

「あんまりはっきり見られちゃったら困るのかもしれないよ。ほら、織姫さまに厳しいお兄ちゃんがいるのかも」
ちゅっと軽いキスを唇に落としながら、ね、春奈ちゃん?と吹雪さんは目配せをした。
「……そうかも、しれないですね」


確かに今のがお兄ちゃんに見つかったら二人で怒られるんだろうなぁ、ぼうっとした頭でそう思った。






読んで下さった大好きな皆様の願いが叶いますように。
2011.7.2 すぴか


思わず持ち帰ってきてしまいました…笑
すぴかさん、フリーありがとうございました。

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