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□期待してもいいですか
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 練習後でヘロヘロになっている立向居くんを連れ出すのは少し悪いかな、とも思った。でも秋さんが「暗くなったら危ないから、誰かと一緒に行ってね」なんて言うから。(だからこれは仕方なくなのだ。私が立向居くんを誘ったのはたまたま近くに居たからで、あくまで偶然。別に立向居くんと2人で買い出し行けるのが嬉しいなんて、これっぽっちも…うん、思ってないとは言えないけれど。)

 夕焼け空が照らし出す私たち2人の影は前に長く長く伸びていて、歩調によっては重なり合うそれに私は見入った。アスファルトと影と夕焼けのコントラストが、なんとも美しい。
 私の右、車道側を歩いてくれる立向居くんは右手に(私以上に沢山、しかも重い)荷物を持って左手は手持ち無沙汰にがら空き状態。かく言う私も左手に頼まれた買い出し用品を持ち、右手を不自然にあけている。(手を、繋げたらいいのに。…なんて。)

「…ごめんね、疲れてるのに買い出し付き合わせちゃって」
「大丈夫だよ。オレは全然平気だし、…こんな時間に音無さん1人で買い出し行く方が危ないもん」
「そ、そうかな…」

 互いに前を向いたり俯いたり、視線は合わない合わせられない。だって今顔を見られたら、夕陽以上に赤くなっているのがバレてしまうから。

 立向居くんは、歩幅の小さい私を気遣うようにゆっくり歩いてくれた。私はそんな彼の優しさに触れていたくて、いつも以上にゆっくり小さな歩幅で歩く。このまま時が止まってしまえばいいのに。そしたらずっと、立向居くんの隣に居られるのに。(私ってば乙女だ。)

「…音無さんは、」
「ん?」
「なんで…オレを誘ったの?」
「、え…」
「鬼道さんとか木暮とか…他にもみんな居たのに」
「そ、それは…」

 詰まる言葉、立ち止まる足。影の中の彼は、私の方を向いていて。(ああいけない!赤い顔に気付かれてしまう)
 彼に顔を見られないよう必死に俯いて言葉を探す。急げ、急げ。上手い言い訳を考えなきゃ。

「…た、たまたま!立向居くんが一番近くに居たからっ、」
「………そっ、か…」
「あ、いや、あ、違う!」

 彼の項垂れる気配に、思わず顔を上げてしまった。(あ、…顔を、見た、見られた、見られた!)
 もうダメだと思った。終わりだ。私の隠しきれない想いが溢れて、彼に伝わってしまう。驚くだろうか。引かれるだろうか。気付かれるつもりなんてなかったのに、どうしようどうしようどうしよう!(だけど、)

「は、はは」
「はは…音無さんの顔、真っ赤」
「たっ、立向居くんだって真っ赤だもん!」

 驚くことに、真っ赤な顔をしていたのは彼も同じだったのだ。私の頬に集まる熱は確かな確信とともに、嬉しそうに笑った。









期待してもいいですか
(自然と繋がれる私の右手と彼の左手)
(高まる熱に、嘘は付けそうにない)


*

のんこさんリクの立春で練習後2人で買い出し、です。…どこでどうしてこうなった(笑)
相変わらず落ちが弱くて申し訳ないです(´・ω・`)

のんこさんのみお持ち帰り可です!
というか気にくわなかったら言って下さい書き直します><;
ではではのんこさん、リクありがとうございました!
これからも梅擬きをよろしくお願いします^^

20110704 いもこ

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