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□ピンクのビキニ
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 女の子の私より白いその肌が羨ましくもあったし、妬ましくもあった。
 男とは日に焼けているから強く逞しく見えるのであって、色白なんてなよなよしてて好きじゃない。そう言ったらベッドの中のボクはなよなよどころか逞しすぎて大変なんだからいいじゃない、と事も無げに笑われた。(言葉のセクハラだ、それは!)

 とりあえず私より白い肌してるのはどうなんだ。いくら北海道出身だからってなんだよその色白。ああ、夏が来たら私の方が黒いのバレちゃうじゃない!

「というわけで、今年の夏は海に行きましょう」
「えー、暑いからやだなぁ」
「沖縄のキレイな海が見たいんです」
「しかも沖縄なんだ?」
「宿泊費ただですよ、綱海さん家泊まれるから」
「勝手にいいの?そんなこと決めて。ってゆうか綱海くん大学受験なんじゃ」
「綱海さんが大学なんて行くわけないでしょう。今年の夏もサーフィンしまくるらしいですよ」
「…綱海くん…」

 もうすぐ7月、暑いのが苦手な吹雪さんは気怠そうにマックシェイクを飲み干す。
 北海道出身で暑さに弱い彼は制服のシャツを胸まではだけさせ、周囲の女の子にフェロモンを撒き散らしていた。(たぶん自覚してやってる。この人はそういう性格だ。)

「来年は吹雪さん受験でしょう?だから思い切り遊べるのって今年くらいじゃないですか」
「うーん…。鬼道くん怒りそうだしなぁ」
「何をいまさら」

 あんなことやこんなことまでしといて、よく言う。(お兄ちゃんの耳に入りでもしたら、吹雪さんはとっくの昔に血祭りにあげられているだろう)

「私の水着姿見たくないんですか」
「それは見たいけど。」
「キリッとして言わないで下さい」
「ビキニがいいな、ピンクの」
「そんなこと聞いてません」
「えー。ボク春奈ちゃんがピンクのビキニじゃなきゃ行かないよ」
「ピンクのビキニなら行ってくれるんですか?海」
「うん、いいよ。ビキニには代えられないからね」
「どんだけ見たいんですか」
「ホントはベッドで一番見たいけ「殴りますよ」」

 握り拳を見せ付けると、冗談冗談とにこやかにかわされた。この人の短所は口を開くと下ネタしか出て来ない所だろう。(これがボクなりの愛の示し方なんだよって言われたけど、私はそんなのいりませんって真正面から断ってやった)

「今年の夏は、たくさん遊びましょうね」
「うん。でも綱海くん家なら静かにやらなきゃね」
「…何を」
「え?ナニを」
「…やっぱりやめましょうか、海」
「うそうそ冗談、もう春奈ちゃんはすぐ怒るんだから」

 へらへら笑って、私の手を握る。(どうやら離す気はないらしい。それを愛しく思う私はただの馬鹿だ)
 もうすぐ蝉が五月蝿く鳴きだす。ああ、今年の夏が楽しみだ。(決してそっちの期待はしていない!)








ピンクのビキニ
(あれ、吹雪さんなにTシャツ着てるんですか!焼けなきゃ意味ないでしょう)
(わ、いきなり脱がしにかかるなんて春奈ちゃん大胆だなぁ)
(…っ!?ふ、吹雪さんの馬鹿っ!!)


*

吹雪くんはこんなに変態じゃないよねごめんなさい

20110628

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