reborn

□恋愛論は充分だ
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 8歳差、というのはなかなかどうして越えられない。
 私がおぎゃあと生まれた時、彼は8歳の小学生。私がきゃっきゃと小学生になった時、彼は15歳の高校生なりたて。(高校行ってたのかは知らないけども)
 そうして私がうふふと中学生になった時、彼は22歳ですでに五千のファミリーを束ねるマフィアのボスだった。(なんてこった!)

「ディーノさんの許容範囲は何歳までですか」
「んー…好きになったら100歳だろうと10歳だろうと、関係ないかな!」

 白い歯を見せて輝く金髪はそのままに、彼は私に甘くあまく微笑む。
 私はそんな彼に見惚れそうになるのをなんとか堪える。(騙されるな、彼は天使の皮を被った悪魔だ!)

「100歳のお婆ちゃんや10歳の小学生に恋が出来るんですか」
「恋は出来なくても、愛することは出来る」
「…何が違うのかハルにはわかりません」
「ハルは子どもだなぁ!」

 ははは、と鷹揚に笑う彼。腹が立つったらありゃしない。(ええすみませんねどうせ私は恋と愛の違いもわからない子どもですよ)
 ブスッとした表情で頬を膨らましていると、彼は私の機嫌を損ねたことに気付き慌てて取りなすように言った。

「つまりな?好きは大まかに分けて2種類あるんだ」
「はぁ」
「ハルはランボやフゥ太が好きか?」
「それはもちろん」
「じゃああいつらを恋愛対象として見ることは?」
「…ないです。2人とも大好きですけど、それは弟みたいな感覚だし」
「じゃあその好きは愛だ。恋じゃない」
「?ただの好きじゃないんですか?」
「まぁ言っちまえばそうなんだけど、その感情が恋でないのは確かだろ?」
「はい」

 彼は学校の先生より幾分優しく教え諭す。(たぶん、彼が先生だったら誰よりも人気のイケメン教師として有名になるだろう。私の通う緑中なんかに来たら、それこそもう阿鼻叫喚で狂喜乱舞。)

「恋ってのはさ、オレの経験上1人にしか出来ないわけよ。相手が変わる時は来るかもしんないけど、基本は1人。」
「愛は?」
「愛は同時に複数のやつを相手に出来る。」
「…でも恋人同士は愛しあっているから、キスとか…そういうことをするんですよね?」

 そう言うと彼は待ってましたと言わんばかりに目を輝かせ、顔を綻ばせた。(うう、そんな目で私を見ないで!)

「オレが最初に言った愛って、どんな愛だと思う?」
「…?私がランボちゃんやフゥ太くんに抱く愛ってことですか?」
「そ。ハルはランボやフゥ太のことが好きだろ?その感情を愛と仮定すると、ハルのその愛は自分の中だけで思ってる愛だ。」
「はぁ」
「もちろんハルがランボ達を思ってるのと同じように、ランボ達もハルを思ってる。でもその愛が繋がるのは、恋人同士のやり方とは違うだろ?」
「そ、そりゃそうですよ!」

 私は思わずキスとかその先を想像してしまい、上擦った声で否定した。
 彼はそんな私を知ってか知らずか持論をぺらぺら饒舌に語る。(きっと今まで誰も聞いてくれる人がいなかったのだろう。)

「じゃあ恋人同士のキスとかってのは何なのか。…それはな、日本語で愛を育むってあるだろ」
「ああ、ありますね」
「つまりはそれなわけ」
「…全然わかりません」
「え、そう?んーとだな…恋ってのは愛を育てるものなんだよ」
「んん?」
「つまりな、ハルの中で既に完成されたランボ達への愛とは違って、たった1人の特別な相手と自分の2人で作り上げてくもの。が、恋人同士の愛なわけ」
「…ああ、なるほど?」

 わかったようなわからないような。

 首を捻る私に彼はハルにはちょっと早かったかな、とか言ってその大きな骨張った手で頭を撫で、おでこにキスをしてきた。(まるで妹やペットにするみたいに、だ!)

「…ディーノさんの中でハルは愛に含まれますか」
「もちろん!オレはハル大好きだぜ!」

 にこやかに、そして残酷に。
 彼のその笑顔が腹立たしかったから、今度は私から唇に熱をうつしてやった。(この感情は彼の持論からいけば、きっと叶わぬ「恋」なのだろう。私はそう定義している。)








恋愛論は充分だ
(8歳差、これがなかなかどうして越えられない。)


*

言ってしまえば私の中の恋愛論。
恋(たった1人に抱く感情)と愛(大多数の人間に抱く感情)は別物で、恋から育つ愛ってのは自分1人の中で成り立つものじゃなく2人で育むものですよって意味。で書きたかった(笑)

切実に文章力欲しい。

20110625

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