reborn

□敗北の恋愛を君と
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 「雲雀さん、恋愛の延長は結婚だと思いますか?」

 テラスで優雅に午後のお茶会(強制的)を開いていた僕と彼女は、向かい合わせの席で視線を絡ませる。
 彼女はどこか眠たそうな顔をして、呟くようにそう言った。(結婚は恋愛の延長だと思いますか、だっけ。)

「…聞いてどうするの」

 コーヒーを口に含んで不機嫌にそう言えば、彼女は木苺のジャムを付けたスコーンを一口食べた。(…ジャムが口の端に付いてるよ。)
 何も言わずにそのジャムを拭って口に含むと、彼女は「あれ、付いてましたか」と呑気に笑う。

「ハルはね、恋愛の延長は結婚じゃないと思うんです。」
「ふぅん」
「恋愛の延長ってね、死なんですって。教授の受け売りですけど」

 ふふふと楽しそうに笑う彼女は、今度は紅茶を一口。伏せた瞳が優雅で(喋ると台無しだが)、愛おしく思う。

「ほら、曽根崎心中とかあるじゃないですか。…人間って恋愛をする生き物だけど、実際に心中までする人はあまりいないでしょう?だから、心中するほど誰かを愛してみたいって思いからああいう文学が育ったんだって、教授が言ってました。」
「…ふぅん」

 少しだけ興味深いと思った。まさか彼女の話を真面目に聞く日が来るなんて驚きだ。(知り合って5年以上経つが、実はいつも話半分だったりする。)

「じゃあ雲雀さんにもう一つ質問です。結婚とは何だと思いますか?」
「…さぁ」
「答えは簡単、敗北の恋愛です」

 人差し指を立てて、なにを偉そうに。(どうせそれも教授の受け売りだろう!)

「だからハルはツナさんと恋愛したいんです」
「意味がわからない」
「つまりね、ツナさんとなら一緒に心中してもいいくらい好きということなんですよ」
「僕に言わずに沢田に言いなよ、そんなこと」

 言えるなら最初から言ってますよ、と彼女は頬を膨らませて俯いた。(ああ、そっか。こないだ玉砕したばっかりだっけ。ざまあみろ。)

「それでハルは考えたんですよ。ツナさんとの恋愛は突き詰めて行くと心中に至ってしまうんですが、雲雀さんとなら敗北の恋愛でも楽しいだろうなって」
「、…それはつまり、どういうこと」

 ガチャン、と思わずコーヒーカップが音を立てた。(別に動揺したわけじゃない!)
 彼女の方を見れば、きょとんとしてスコーンを頬張っている。

「え?ハルから言っていいんですか?」
「…あと3年待って」
「わかってますよ。ハルだって学生成り立てだからまだ勉強したいし。ただハルは、」

 にこりと笑って口の端に付いたジャムはそのままに、(ああ、そんな彼女を愛おしく思う僕は馬鹿だ。)








「雲雀さんとなら心中するんじゃなく、最期まで一緒にいたいなって思ったんです。」


敗北の恋愛を君と
(心中よりは僕たちらしい)




 心臓が高鳴って息苦しいなんて、死んでもバレたくない。


*

私が講義で聴いた内容をそのままハルに託しました。
もう少し上手く書きたかったな(´・ω・`)

20110619

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