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□あなたは教えてくれますか。
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 月光に照らし出された銀髪を瞳に捉えた瞬間、私は自然と抱きついていた。ぎゅうう、と抱きしめると銀髪の彼は寝ぼけ眼のような声で驚く。

「…おかえりアル」
「なんだ、まだ起きてたのか。子供はもう寝る時間だぞー」

 真夜中を2時間程過ぎた頃帰って来た彼は私の頭をぐしゃぐしゃと撫でると、ふらつく足取りでソファーに座った。
 頬をほんのりと赤く染めて気持ち良さげな彼は、鼻歌を歌いながらお酒の匂いとどこの誰が付けているかも解らない女物の香水の残り香を纏っていた。
(ああ、見たくなかったなぁこんなの)

「…私子供じゃないネ。もう立派な大人アル」
「あーはいはい」
「私こんな時間まで起きて、もう子供じゃないアル!」
「はいはいそうね、ほら、明日も早いんだからもう寝ろよー」

 彼は一度だけ大きな欠伸を零すと、そのまま寝息を立て始めた。
 月光に照らし出された銀髪はふわふわと風に揺れて私の心をくすぐり、彼の寝息が響く室内に私という存在を際立たせる。(なんて虚しくて寂しいのだろう!)

 あぁ、なんで眠いの我慢してまで起きてたのたかな。これじゃあ馬鹿みたいじゃないか。どこに行ってたのかも、誰と一緒だったのかも、教えてなんかもらえないのに。(解ってる、解ってるよ私が子供な事くらい。)


「銀ちゃん…」


 彼は私の言葉に反応する事もなくすやすやと寝息を立て、へにゃへにゃと寝言と呟く。
(狡いよね、貴方は)


「…好きアル、銀ちゃんが」

 どんなに背伸びしたって、どんなに貴方を思ったって、貴方は私を見てくれない。
 本当は聞きたくてたまらないよ、どこに行ってたの、誰と会ってたの、その人は私より綺麗だった?その人の事、好きになった?
(でもね、聞けない。)
 貴方はいつだって私を子供だと言って遠ざけるから、


「銀ちゃん、銀ちゃん…」


(嗚呼、触れる事すら叶わない。)
 切ないと叫ぶこの胸が、助けを求めるように涙を零す。ぽたりぽたり、零れ落ちた雫は私の頬を伝いまた胸の中へと戻って行った。
(どうして私は子供なんだろう)



 この差を埋められる物があると言うのなら、神様。(どうか私を大人にして下さい)


「…おやすみアル、銀ちゃん」


 そっと触れた彼の唇からはほんのりとお酒の味がして、私の大人になりたいという気持ちをより一層強めるのだった。
(いつか教えてくれますか、酒もタバコも貴方の全ても)


*

銀神は最高だと思う。

20110618

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