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□繋いだ手を、どうか離さないで。
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 立向居くんに告白されてお付き合いを始めから、早1ヶ月。今日もこれといった進展はない。(いや、進展を望んでるのかと言われればそれは違うんだけどさ、なんていうか…こうまで手を出されないのは何か私に問題があるのかな、とかちょっぴり不安に思ってしまうわけで。私って女の子としての魅力がない、のかな?みたいな。)

「あ、音無さん!おはよう!今日も良い天気だね」
「おはよう立向居くん。朝練してたの?」
「うん、早く目が覚めちゃったから」

 爽やかに人懐っこい笑みを浮かべる立向居くん。あぁ、やっぱり好きだなぁ。(こんなこと男の子に言ったら失礼なのかもしれないけど…可愛いんだよね、立向居くんって。子犬みたいで。)

「朝からお疲れさま!お腹空いてるんじゃない?」
「うん、もうペコペコ!でもまだ朝食まで時間あるから…もうちょっと我慢しなきゃ」
「ふふ、そう言うと思って…作って来たんだ、おにぎり!良かったら食べて」
「えぇっ!わざわざ作ってくれたの…?ありがとう、音無さん!」

 キラキラと嬉しそうに瞳を輝かせた立向居くんは、私の差し出したおにぎりをペロリと平らげてしまった。(ああ、やっぱり男の子なんだなぁ。子犬みたいに可愛くても、私の特別な男の子。)


「…立向居くん。」


 なんとなく、『今進みたい』って思った。私1人が望んでも届くことのない場所へ、景色へ、2人で行ってみたい。(手を繋いでたわいもない話をしたり、寄り道したり、ケンカしたりしながらたくさんたくさん一緒に笑って、)


「…私、立向居くんのことが好き」
「、音無さ…」
「立向居くん、…私はあなたと、いろんなことを経験したいです。」


 繋いだ立向居くんの手は思ってた以上に大きくて、私の手には収まりきらなかった。(それはまるで私の心から溢れ出そうになるあなたへの想いみたいで、愛しさが募るとはこの事か、となんとなく笑みがこぼれた。)








繋いだ手を、どうか離さないで。
(立向居くんは真っ赤になりながらも、私の手を握ったままだった。ああ、私あなたのことが大好きです。)



*

へたれなたちむ

20110617

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