reborn

□要らぬ知識は僕に問う。
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 本当に弱い所は誰にも見せない彼女は、それこそ日課と言っていいくらい一人ひっそりと嗚咽を漏らす。それは昼間であろうと真夜中であろうと同じ事なのだが、そういう瞬間に出会ってしまうのがこの僕だ。
 彼女は酷く嗚咽を漏らしている時もあれば涙をポロポロ零すだけの時もあり、そんな彼女に僕は掛ける言葉も無く、ただただその小さな背中を見つめては愛しいなぁと思うのだ。

 震える唇も涙に濡れて光る睫毛も、きっと僕に向けられる事はない。だけど願ってしまうのだ。気付いて、僕は君を見ているよ、と。(十年という歳月は僕に余裕を与えた訳ではない、ただ不要な知識ばかりを与えてくれた。)


「、ハル姉」


要らぬ知識は僕に問う。
お前はいつまで弟でいるのだ、と。
だから僕は答える。
ずっとだよ、と。

すると要らぬ知識はまた僕に問う。
彼女に思いを伝えなくていいのか、と。
だから僕はまた答える。
ここに居るのは十年前の幼き日の彼女だからフェアじゃない、と。(たぶん僕は怖いだけなのだ。十年前の彼女にまで振られてしまっては、きっと立ち直れないから。)

 振り返った彼女にもう涙の後はなくて、僕はまた愛しさを募らせた。
 今抱き締めたらどうなるのかな、なんて。(きっとどうにもならないもどかしい思いで一杯になっちゃうんだろうけど。)


「はひ?どうかしましたか、フゥ太君。」

 けれどやっぱり僕は、(願ってしまうのだ。彼女の涙を、そして彼女の幸せを。)

「…京子姉が、呼んでたよ。」
「はひ!わかりました!伝えてくれてありがとうございますー!」


 にっこりと笑った彼女に今度は僕の涙腺が緩んできて、駄目だな僕ってカッコ悪いと心の中で嘲笑した。(こんなだからいつまで経っても弟扱いなんだろう。)


「…ううん。僕に出来る事があったら言ってね。手伝うから。」
「あはは、ありがとうございます!頼もしい助っ人ですね!」


 彼女はそう言っていつものように元気一杯で鼻歌混じりに走っていった。僕はそんな彼女を眼で追って、知らず知らずのうちにぽたりと涙を零した。


(要らぬ知識は一言言った。やっぱりお前は馬鹿だなぁ、と。)




 ごめんね、僕もそう思う。


*

漫画に沿ったフゥハルです。しかし古いな(笑)

20110615

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