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□痛くてたまらない。
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 正直言って私は凄く嫌な女だと思う。自分で言うのもなんだけど、さ。だってもしも自分みたいな性格の人が側に居たら、イライラして仕方なかったと思うから。

「はぁー…」
「秋さん、どうしたんですか?ため息なんかついて…」
「ううん、なんでもないの。ちょっと嫌気がさしただけ」
「嫌気…ですか?」
「色々、ね。…さぁ、そろそろみんなの休憩時間ね。ドリンクの準備しましょ!」
「あ、はい!」

 話をはぐらかされた音無さんは少し不満そうにしながらも、それ以上は何も聞いてこようとしなかった。(良い子だなぁ、時々無鉄砲だけど。)

「頑張れ私、しっかりしないと」

 独り言のように呟いてから、いまだ練習を続けるメンバーを見た。ぐるりと見回して、やっぱり最後に行き着くのは…

「いいぞ壁山!その調子だー!」

 みんなの頼れるキャプテン、円堂くんだった。たぶん私は、円堂くんが好きなんだと思う。仲間としてじゃなく、友達としてでもなく、異性として。(だって胸がきゅうっとする。これって、私が円堂くんに恋してる証拠でしょう?)
 でも、それと同時に思い出すのは私の名を柔らかく呼ぶ彼で。

『秋、…好きだよ。』

 そう言って私を抱き締めた一之瀬くんの身体は震えてた。好きだよ、一之瀬くんのこと。でもそれは異性としてではなく、友達としてなんだってことに私自身心のどこかで気付いてた。(だったらどうして、)

「…元気かな、一之瀬くん」
「もうっ、ノロケですか?秋さんってばホントに一之瀬先輩にぞっこんですね!」
「そ、そんなんじゃ…」

 痛いところを、突かれた気がした。(一瞬、無邪気に笑う音無さんが悪魔に思えた。ああ、怖い子だな。私の気持ち、解らないフリして全部見透かしてるみたい。)

「……私はてっきり、秋さんはキャプテンのことが好きなんだと思ってたから…少し、残念です」
「!お、音無さ…」
「みなさーん!休憩時間ですよー!きちんと水分補給して下さーい!」
「やった!やっと休憩っすー!!」

 わらわらとやって来たメンバーによって遮られた音無さんとの会話、だけどあの瞬間の音無さんの目は、ちっとも笑っていなかった。(まるで、私を非難するかのように。)

「…当然と言えば、当然だよね。」
「?どうしたんだよ秋。なんか元気ないぞ?」
「え、そんなことないよ!…ただ、少し疲れちゃっただけ」
「大丈夫か?無理すんなよ!」

 ごめんね円堂くん、今はその優しささえ。






(痛くてたまらない。)


*

円堂が好きなのに一之瀬と付き合うことにした秋ちゃんと、そんな秋ちゃんを見透かしている春奈です。
GOを見て一秋が公式っぽいのはわかってるんですが、秋ちゃんは素直に一之瀬を選んだのかなーと思ってしまって。
こんな書き方をするのは一之瀬にも秋ちゃんにも失礼なんですけどね。
不愉快に思った方がいらしたらすみません。

20110615

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