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□君の好きな人
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 オレは音無さんが好き。音無さんはたぶん、木暮が好き。(じゃあ、木暮は?…そんなの決まってる。)

「木暮がずっと小さいままならいいのに」
「なんだよいきなり。イヤミなヤツだな、お前」
「ははは、ごめんごめん。冗談だよ」
「…心配しなくても、立向居の身長超すわけねーだろ」

 そうだね、今からどんなに伸びたとしても、木暮がオレの身長を超すことはないだろう。(けど、さ。)

「…音無さんの身長は抜けるんじゃない」
「!な、なんで今ここでアイツが出てくるんだよ!ワケわかんねー!」

 赤くなって怒る木暮は、まだまだ小さい。でもきっとそんな木暮も、中学高校と学年が上がるにつれて少しずつ、だけど確実に大きくなるんだろう。(そしていつかは、音無さんの身長を抜く日が来るんだろうな。)

 ああ木暮、頼むから小さいままで居てくれないか。お前が大きくなっちゃったら、オレに勝ち目はないんだ。
 もし木暮が大きくなってしまったら、音無さんはきっと今以上に木暮を意識するようになるだろう。今だって、見てるのは木暮ばかりなのにね。(オレだって音無さんのこと見てるのになぁ。ああ不毛。)


「実は毎日牛乳飲んで努力してるしね」
「う、うるせぇ!立向居のアホ!」
「こぉーらぁー!木暮くーん!立向居くんにアホなんて言っちゃ駄目でしょー!!」
「わっ!お、音無!?」
「はは、怒られた」
「て、てめー!覚えてろよ立向居!」

 遠くからずんずんやって来る音無さんを横目に、木暮は真っ赤な顔して逃げ出した。しかしながら、こんなちょっとの悪口も聞こえるなんて、音無さんはよっぽど木暮を意識してるらしい。(いっそ清々しいくらいだ。腹は立つけどね。)

「もう、逃げ足だけは速いんだから!…ごめんね立向居くん、木暮くんが失礼なこと言って」
「気にしてないから大丈夫だよ。それに、音無さんが謝ることじゃないし」

 そう、別に音無さんが謝ることじゃない。なのに彼女がこんなに申し訳なさそうな顔をするのは、木暮の保護者分だからだろうか。(いいや、そんなわけない。きっと彼女は、)

「後で謝るように言っておくね。立向居くんは練習頑張って!」
「…うん、ありがとう」




 もうきっと気付いているんだろう。(自分の気持ちに、オレも木暮も音無さんもみんな。)



「…オレも小さければ良かったのになぁ」


 駆けて行った音無さんを見つめながら、オレはぽつりと呟いた。(こんなこと言ったら木暮に殴られそうだけど。)




溜め息は音も無く響く。
(少しはオレのことも見て欲しいわけで。)

*

立向居視点の木春。たぶんアニメの3人の関係はこんなだと思う。立向居の性格がちょっとアレだけど。どうしようもない気持ちを立向居は抱えていそうだな(´`)

20110614

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