SAMURAI7 短編集

□大嫌い
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この世で一番嫌いなものを彼女は全て持っていた
裏切りをはじめ、殺し盗み、と何でもやるらしい彼女を、私は嫌いになれない、なんて…
凄く矛盾してはいないだろうか

今目の前にいるのは血だらけの顔を腕で拭う…
まるで獣だ

「……あれ…ヘイハチいたんだ…」
「………」
「そんな怖い顔しなくてもいいじゃん、すぐ帰るし」

そう言うと足下で既に息絶えていた男の首を跳ねた

息絶えていたといっても数分前まで確かに動いていた体、首から溢れる血は滝のように流れ出る
ふと視線を上げるとそこには楽しそうに微笑み手に持っていた生首を眺める彼女

「…何が…楽しいんですか…?」
「ふふ、知りたいの?」
「………」
「…じゃあね」

歩き出す彼女
ヘイハチはそっと彼女の手を取ると強引に抱き寄せた

「……大嫌いです…貴方なんか…」

彼女は寂しげに微笑んで肩を押す

「知ってるよ」

いや、知らない
貴方は知らないんだ

私がどれほど貴方が嫌いか
そしてそれが何故なのか

彼女の背中が見えなくなる寸前、呟いた

「どうして、気づいてくれないんですか」

聞こえたのだろうか、ピタリと足を止めヘイハチを見た
意味が分からない、そんな様子

「……嫌いになれない事くらい…分かってください」
「………」

なんて身勝手なお願いだろう

当然彼女は眉間のしわを更に深くして見ているだろう
視線を向けると顔を真っ赤にして狼狽える彼女

意外な反応に思わず面食らう

何だろう

凄く満たされるこの感覚は

「……言ってくれなきゃ…分かるもんも分からないよ」
「………」



走り寄って
今一度抱きしめた




苦しいよそうですねっていうか私血だらけだ、しかもコレどうしよう、首………貴方のそういう空気の読めないところが嫌いなんですよ






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