SAMURAI7 短編集

□代償
1ページ/1ページ


四つの墓

その中で唯一、二本の刀が刺さった墓を眺めて尋ねた

「キュウゾウは…最期になんて…?」
「……決着を忘れるな…村で待つ…と…」
「…そう…」

頬を伝う涙は悲しさからではない

悔しさからくる憎しみの涙

「私との約束…結局守れなかったわね……だから言ったのに…傷つくのは私だって…分かりきってたのに」
「………」
「一緒に…」

何かが切れたように叫んだ

「一緒に死んでくれるんじゃなかったの!」

懐に忍ばせていた小太刀
それを男の喉元めがけて突き上げる

「誰が殺した!」
「………」
「誰が殺したの!」
「………」
「答えろカンベエ!」

気が付くと侍が守った村は全滅していた

ただ一人を除いて

「…わ、私が…キュウゾウ殿…を…」
「………」
「せ…先生を助けようと…思って…」
「………」
「落ちていた……銃…で…敵を……その後ろに…キュ…ゾウ…殿が…」
「………」

こんな奴に…キュウゾウが…

大きく舌打ちしたがすぐに笑みを浮かべて言い捨てる

「……キュウゾウ……悔しかっただろうなあ…」
「………」
「アンタのいう先生と決着つける為に来たのに…お前みたいな甘ちゃんに殺されたんだもの…しかも間違えて?…アイツは馬鹿だ、そう思わない?」
「………」
「でもねえ…」
「ッ!」

左肩に突き刺さったそれに目を見開き悲痛な叫び声をあげた

まるでネジでも閉めるかのように刀を回しながら淡々と呟く

「キュウゾウも確かに馬鹿だけど本当に馬鹿なのは私なんだよ」
「ぐ、うあッ」
「…戦になんて行かせたくなかった…隙あらば刀を奪ってやろうとも考えたけど…何せ彼……私より刀が大事だから…一時も刀を手放さないんだ……笑えたよ」

既に大量の血が体外に流れ出てしまっている

早く刀を抜いて止血しなければ自分は死ぬ!
そう確信した瞬間、右肩にも激痛が走った

「ぐああぁッ!ああッ、うう…」
「……だからせめて……彼の愛する戦場で…彼の手で……逝きたかった」

溢れ出す涙を拭いながらも手はひたすら刀を回しカツシロウを苦しめる

青くなる唇を見つめて尋ねた

「楽に…なりたい?」

ゆっくりと頷くカツシロウの顔を勢いよく蹴り上げた

そして横たわった体を踏みつけ冷たく言い捨てた

「楽になんて…させてあげない………お前にはこの世のあらん限りの痛みと苦しみを…陵辱、恥辱の限りを尽くして……最も醜い方法で殺してやる」

狂っている…

カツシロウがそう思ったのと同時に満面の笑みを浮かべてこう尋ねた

拷問ってされた事ある?

眩しいくらいの笑みを浮かべる女を見上げてカツシロウは思った



あの時、私が
死ねば良かった…













[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ