精霊の守り人 短編集

□許婚
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「……あら!」

瞳を輝かせてはにかむ、目の前の女性は私の許嫁
しかし私は彼女が

「…久しぶり」

苦手だ

「お姉さんは元気?」
「ええ」
「そう、なら良かった」

実姉の親友だというのが苦手な理由
しかし他にもある、むしろ此方の方が主であったりするから困った

私の家系は男児が育たず、一定の年までは女装させているのだが(勿論私も例外なく女の格好で過ごした)
そんな私を彼女は遊びに来る度に可愛い可愛いと連呼し、まるで着せ替え人形のように…これ以上はやめておこう、切りがない

早い話がただのトラウマ

「それにしても…貴方、背が伸びた?」
「最近急に…」
「まあ男の子だものね」
「………」
「あら駄目よ、女の子には例え思ってなくても、貴方も暫く見ない間に綺麗になりましたね。とか言わなきゃ!」
「そ、そうだね」

伸びてきた手は私の頬に触れ、再び微笑み呟いた

「ねえ、お義母様に似てきたって言われない?」
「……言われない」
「ふふ!」

魔性だ

つくづくそう思う

姉は弟の私から見ても綺麗だと思うし、求婚してくる貴族も多い
そんな姉の影響かは分からないが、彼女は姉と似ている部分がある

頬を撫でていた手はするすると首筋を沿って胸元へ

「……私は父親似だよ…」
「言われてみればそうねえ」
「………」
「ふふ、からかってなんかいないわ」

見透かされていた事に対して、顔が熱くなる

「だって貴方、私の事が好きすぎてどうにかなりそうなんでしょ?」

見ていてそれほど面白い事はないわ

「………」
「早く大人になってね」

トラウマなんかじゃない、ただのコンプレックスだ



あと何年経ったら…



結婚しようふふ、待ちくたびれたわ






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