クローズ0 短編集

□子供の特権、それは純粋でいられる事だ
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どうして彼らは問題ばかり起こすのだろう
そんな事聞いたところで何が変わるわけでもない
ただ気に入らないから人を殴る
感情の中で最も激しく分かりやすい怒りというそれを伝える術を知らない、伝える手段が行動となって表れているだけの事
それだけの事

私からしてみれば彼らは子供で、それだけ純粋なのだ、羨ましい限りじゃないか
大人になるとそんな事出来なくなる

と、言うよりは許されなくなる

「今回はまた派手にやったねえ」

鈴蘭男子高等学校の保健医なんてこんな遣り甲斐のある仕事はそうそうないわ
毎日が負傷した生徒の手当て、そして看病
ごく稀に重症の生徒を病院へ送る際の引率を仰せつかる
ここの教師陣は完全に生徒になめられているからなのか、それともただ単純に私を気に入ってくれているからなのかは定かではないが、とりあえず、何も言わずに手当てさせてくれる彼らに感謝している
私の仕事を奪わないでくれてありがとう

「黙って治せ」
「あのねえ、治せって言われて治せたら先生人間じゃなくなっちゃうから」
「保健医だろ」
「全く、すぐに治したいならそのまま真っ直ぐ病院へ行きなさい」
「あんな薬品臭えところ行けるわけねえだろ」
「ここも十分薬品臭いと思うんだけど」

黙るな少年、それでもお前は武装戦線とやらの四天王、阪東秀人か
もっと噛み付いてきてくれないと面白くないよ

そんな事言っても目の前の少年、いや、少年より遙かに大人びていて、大人と呼ぶにはあまりに純粋な、青年は言い返せない

怪我は治したい、が、病院は嫌だ…それはつまり私のいるここ、保健室ならいい
私がいるから?嬉しい事言ってくれるじゃないか
まあ本人から直接聞いたわけではないから違うかもしれないが、間違ってはいないと思う

何年生きてると思ってる?アンタ達高校生より数年長く生きてるんだ。それくらい分かるよ
アンタ達は生き方不器用だけど素直だから、全部顔に出てんだよ

「私に会いにきたって素直に言えば可愛げもあるんだけどなあ」

ほら、赤くなった!分かりやすいなあ!
隠してるつもりだろうけど全然隠せてないからね、耳まで真っ赤にしちゃってさあ、ホント、可愛いんだから

「おい」
「ふふ、何?」
「顔赤えぞ」
「え」



そんなバカな



そう言う自分だって真っ赤だよ、ゆでだこちゃんだようるせえ、黙って手当てしろなんて奴だ!まあいいけどね!






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