Short 1
□甘い水
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近頃のプラントは気象プログラムが異常を起こしていて、天候が全く安定していない。
昨日真夏日のように蒸し暑かったと思えば、今日は真冬日のように寒かったり。
そんな状況になると上層部がキラに助けを求めるのは至極当然の事で。
そしてキラがそれを拒めないのも然りだ。
漸くして、ザフトでは秒単位の間隔でせわしなく動き回る白服キラ・ヤマトの姿が目撃されるようになったのである。
∇Δ∇Δ∇Δ
「ヤマト隊長!先程の件ですが…」
「その調整は終了したのでジュール隊長に確認して下さい」
「ヤマト隊長っ!!プログラムにエラーが!!」
「わかりました。今確認するので取り敢えず落ち着いて」
その日もキラは次々と舞い込むシステムエラーの対処やプログラムの調整にてんてこ舞いだった。
片付けても片付けても減らない仕事の山に正直滅入って溜め息をついたその瞬間、パソコンがけたたましい音を立てる。
またか……と舌打ちしそうになるのを何とかこらえ、キラは憂鬱な心で通話ボタンを押した。
「はい、こちらキラ・ヤマト」
対して相手の事を気にせずに通話に応じたが、“SOUND ONLY”と書かれた
パソコンの向こう側から聞こえてきた声にキラは目を瞠った。
『キラ』
低く甘く響くテノール。この声の主をキラが間違える筈はなかった。
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