SSS

□君の隣が一番好き
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ふわり、ふわり。
緩やかに頭を撫でられる感覚が心地よくて、更に深いところまで意識がもっていかれそうになる。
けれど、次に頬に甘い感触を感じてわたしはゆっくりと意識を浮上させた。

「……ん、ぅ?」

「あぁ、起こしちゃった?」

ごめんね、と上から降ってくる声につられてまだ重たい瞼を引きずりながらゆっくりと視線をそちらに移す。
片手に難しそうな本を手にしているガーネットと視線がかち合う。
彼は真上にいる。そこでわたしはやっとガーネットの膝に頭を乗せていることに朧げながら気づいた。

「…ガー、ネット?」

「ふふ、まだ寝ぼけてるね。」

サラサラを髪を梳くようにして撫でられる、この感触があまりにも気持ちよくて。
まだ覚めきっていない思考回路も手伝って、わたしはその手に擦りよってしまう。

「そうしてると、まるで本当の猫みたいだね。ラピス。」

「ね、こ…。」

まるで反応するように、頭の両横とお尻についている黒い耳と尻尾が揺れる。
休日くらいお洒落に気を遣ったら、と言ってガーネットが尻尾に付けてくれた深紅のリボンについている鈴がチリン、と鳴った。

猫。
確かにそれは今のわたしにもっとも近い言葉だ。
けれど、本当は違う。
黒い耳も尻尾も。所詮は作り物。
わたしはニンゲンで、本来ここにいてはいけない存在。
どうやっても、ガーネットには近づけない。そういう存在。

少し、悔しいと思う。
ガーネットの庇護なしには生きていくことさえ難しい、わたしという存在が、たまに酷くちっぽけに思えて。
頑張って政府警察の監査補佐官という地位にたどり着いても、結局わたしはガーネットに守られている。
それが、悔しい。やるせない。

「…ガーネットは、わたしのこと、邪魔に思うとき、ある…?」

夢と現実との境界が曖昧なまま、滑り落ちる言葉。
それにガーネットは僅かに目を見開いた後、穏やかに笑った。

「そう思ったことは一度もないよ。
君は俺にとって大切な食糧だし。…それに、」

ラピスが来てから、ただ広いだけでなんの面白味もなかった家が、随分賑やかになったしね。
そう、穏やかな笑顔はそのままで言うガーネットは嘘をついているようには見えなくて。
瞳を見ても、そこにはただ優しい光があるだけだった。

「…そ、っか。」

「ふ、まだ眠いんでしょ? ラピス。
良いから、もうしばらく眠りなよ。」

前髪をかき分け、軽く額に口づけを落とされる。
意識が浮上する前に頬に感じた感触と同じだった。
また頭を撫でられて、それに引きずられるように、わたしはまた意識が沈んでいったのだった。







君の隣が一番好き
((自分で言うのもなんだけど、ちょっと懐きすぎじゃない? わたし…。))
(本当、可愛いなぁ…。食べちゃいたいくらい、ね。)


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