SSS

□雨の日が好き。
1ページ/1ページ


しとしとと降り続ける雨は、もう1週間は止む気配すら見せない。
サンシェスタ王国では珍しい雨季の突入に、私は執務も忘れて渡り廊下で空を見上げていた。
ガラス張りの渡り廊下は雨が流れて、まるで雨のカーテンの中にいるみたいだった。

「雨、止まないな。」

渡り廊下に響いた声に驚いて右側を見ると、入り口にはライトが立っていた。

「ライト王。」

「今ここには誰もいない。普段の呼び方で問題ないぞ?」

いたずらっぽく笑う彼に私は観念したように苦笑するしかなかった。
彼は私の隣まで来ると同じように窓の外を見た。

「いつ止むかの目処はたったか?」

「シルバとカルディアと三人がかりで色々やってみたけれど…そうね、少なくとも後二週間はこのままの可能性が高いわ。」

「ちょっと長いな…水害とかが起こらないと良いんだけど。」

サンシェスタは比較的晴れ間の多いのが特性の国であるが故に、自然災害への防備が他国と比べて少し弱い。
改善しようという話は議題で何度か出てきているんだけれど…他の案件も大量かつ厄介なものばかり溜まっているから手を出す暇がまだ確保できないのよね…。

抑えきれなくなったらまた出張に行くわけなんだけれど…果たして今年はどのくらいもつやら。

「ライトは、雨は嫌いかしら?」

なんとなく問いかけてみると、ライトは少し考えるように頭を傾ける。

「んー…まぁ珍しい気候ではあるから俺的には貴重ってのが先にくるかな。
好き嫌いとかは、あまり気にしたことないかも。」

アマリアはどうだ、と問いかけられて私は少し間を置いた後ガラスに指を這わせる。
雨の冷気で冷たくなったガラスは、ひんやりしていて気持ち良かった。

「ふふ、そうねぇ…嫌いではない、むしろ好き、かしら?」

「それはアマリアが水属性だからか?」

「まぁ、それもあるけれど、」

一番の理由は、貴方と出会った日が雨の日だったから、かしら。
私が心身共に強くなるチャンスを与えてくれたのは、三年前の雨の日。
ライトという、大切な存在に出会えたのも、同じ日。
だから私は、雨の日が好きなのかもしれない。

結露した窓を撫でながら懐かしさを感じて私は、隣にいる彼に笑顔を送ったのだった。






雨の日が好き。


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ