短編

□JUNE BRIDE T
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清々しい6月の風が海の潮風と共に俺の横を駆け抜ける。

俺、長曽我部元親はタキシードに身を包み、一人甲板の上に立って潮風にあたっていた。

今日は波も穏やかで船は揺れることも少なく進んでいる。

まぁ、俺が今乗っている船はウェディング用の豪華客船だから揺れることなど滅多にないんだけどな。



***



ドアをノックして部屋に入る。

ここは俺の花嫁、紗菜の控え室になっていた。


「よう、紗菜、絶好の船出……じゃなかった、ウェディング日和だな」


そう声をかけるとウェディングドレスに身を包んだ紗菜が顔を上げた。


「チカちゃん……」

「お前のウェディングドレス姿も……その……なんだ……すっげぇ似合ってると思う……」


照れながらもそう言うと紗菜は真剣な顔でこちらを見てくる。


「チカちゃん……」

「なんだ?」

「き……気持ち悪い……」

「おま……っ!!俺が羞恥を忍んで言った台詞を気持ち悪いってなんだよ!?」

「ぅっ……」

「おぃ!?」


そう言ったがどうも様子がおかしい。まさか……、


「紗菜、お前……まさか……船酔い……か?」


そう聞くと涙目でコクンと頷く紗菜。


「お前……普通、豪華客船で船酔いはしねぇだろ!波も穏やかだし……どんだけ船弱ぇんだよ」

「いや……私もこんなに弱いとは………うぅっ……もぅ……無理っ!!」

「あ!おいっ!!」


そう言って紗菜は走ってどこかへ行ってしまった。……まぁ大方どこ行ったかは分かるけどな……。
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