短編

□JUNE BRIDE T
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「大丈夫かよ……こんなんで……」


花嫁不在の控え室で一人俺は溜め息をついた。



花嫁の控え室のドアがノックされる。


「おぅ、入っt……」

「よぉ!紗菜、来てやっt――……なんだいねぇのか」


こちらの返事を待たずにドアが開けられたかと思うと、数人の人物が現れる。


「紗菜殿はいないみたいでござるな」

「そうだね、旦那。せっかく紗菜ちゃんの花嫁姿を見に来たのに」

「全く……紗菜に挨拶しに来たのにカラスしかいないではないか」

「お、本当だ!紗菜ちゃんいなくて残念だなぁ。まぁそんなことより、孫市!俺達の結婚式もここで挙げ――……ゴフッ」

「あら、紗菜ちゃんいないんですかー……残念です。せっかく占いでもしながらお話ししようかと思っていたのに……」

「まぁ良いじゃないか!絆があればすぐに紗菜は戻ってくる!」

「ふん……せっかく我が出向いたというのにおらぬとは……」

「お前らなぁ!返事する前に部屋に入っておいて俺のことはスルーかよ!!」


そう言うと全員――伊達政宗、真田幸村、猿飛佐助、雑賀孫市、前田慶次、鶴姫、徳川家康、毛利元就の8人が一斉にこちらを向く。


「あぁ、お前いたのか」

「いたのかじゃねぇだろ!!」


全く……そう溜め息をつくと、まぁまぁと独眼竜が口を開く。


「まぁ、いいじゃねぇか。大体、お前に紗菜を任せるとか俺は不安でしょうがねぇんだけどな。つうかむしろお前に任せるくらいなら俺が紗菜を幸せにするね」

「はぁ!?お前何言っt――……」

「私もその意見には賛成だな」


と俺の言葉を遮ってそう言ったのは孫市。


「おい!サヤカ!!どういうことだよ!?」

「どうもこうも……お前に紗菜を任せるのが不安だと言っているんだ。お前に紗菜の夫が本当に務まるのかとな」


するとその言葉にそこにいた全員が頷く。


「お前ら……まさか俺達の結婚を認めてねぇ……のか?」

「あれー?みんな来てたの?」


するとそこに、すっかり気分の良くなった様子の紗菜がドアを開けて入ってきた。


「聞いてくれよ紗菜!こいつら俺達の結婚を認めねぇっt――……」

「「紗菜(ちゃん)結婚おめでとう!!」」

「はぁあ!?」


そういいかけた俺にさっきとは打って変わり紗菜の周りに集まって結婚を祝福しだす8人。


「紗菜ちゃん、花嫁衣装綺麗だね!とっても似合ってるよ!!」

「ほんと、鬼の旦那には勿体ないくらい」

「紗菜、元親が嫌になったらいつでも俺のところに来いよ?You see?」
「元親は不安だが、紗菜が良いと言うならきっと大丈夫だ。幸せになれ」

「本当にあの海賊さんでいいんですか?私はまだ不安です……」

「まぁまぁ、紗菜がいいと言うならきっと大丈夫だ!ワシは紗菜を信じている」

「紗菜、貴様が長曽我部と結婚など我は断じて認めぬ……認めぬからな……」

「うおおぉぉぉ!!紗菜殿おぉぉぉーーっ!!」

「お前ら……」

「「?」」



「いくらなんでも俺に失礼だろうがぁっ!!」



穏やかな海に悲痛な俺の叫びが何度も何度も反響するのだった。
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