短編
□あの花を君に
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ある日の昼下がりのこと。任務を終えた俺、猿飛佐助は上田城に戻り、いましがた報告を終えたところだった。
長い廊下を歩いていると縁側で草木を愛でる俺様の愛しい妻、紗菜の姿が目に入った。
「何を見ているの?」
そう声をかけると、
「あ、お帰りなさい。ちょっと今、庭に紫陽花が咲いたから見ていたの」
紗菜が指差す方を見ると確かに大輪の蒼い紫陽花が咲いていた。
「あの紫陽花、なんだか独眼竜みたいね」
「やめてよ〜縁起でもない」
そう笑いながら言った後聞いてみる。
「真田の大将は花に例えると何なの?」
彼女は少し考えると、
「んー……幸は天竺牡丹かな、燃えるような紅蓮の花。一輪でも周りを圧倒する気迫のある花」
「なるほどね〜!!じゃあ石田三成は?」
「三成様は菫の花。美しい紫の瞳はまさに菫の紫だと思う。そして何より儚く美しい」
「へぇ〜……じゃあ徳川家康」
「家康さんは向日葵かな。太陽のように明るく輝く花」
「なるほど、なかなか面白いね」
「じゃぁさ……俺様は?」
そう問うと彼女はしばらく考えてから急に庭に出ると歩き出した。
「え!?無視!?ちょっと待ってよ!!」