短編
□教師失格
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そんな思いがけない昼休みを過ごし、放課後。廊下を歩く俺に後ろから少し控え目な声がかけられる。
「長曽我部先生……」
聞き覚えのある声に後ろを振り返ると三雲紗菜が立っていた。
「あのっ……その……昨日は……」
「あぁ、大変だったな、大丈夫か?三雲」
「あ、えっ……はい、大丈夫です」
「そうか、よかった」
「はい……」
そこで少し黙る彼女に俺は聞く。
「ところで俺に用があったんじゃねぇのか?」
「あ……はい……あのっ……」
言葉を濁らせながらも彼女は決心したように言葉を発した。
「昨日はありがとうございました」
そう言った彼女の微笑みはどこか大人びていて、それでいて恥ずかしそうに頬を染める姿は驚くほどかわいくて思わずドキリと心臓が跳ねる。
では……と駆けていく三雲の背中を見送りながら俺は思った。
“どうやら俺はとんでもないことになっているらしい……”
***
“一目惚れ”
きっと誰にもあることだろう。たった今俺もその気持ちに気づいた。
……が、問題はそこじゃない。
問題は俺、“教師”が“生徒”に一目惚れ……というか恋をしている事が問題なわけだ。
……どうする?俺。
実際、俺の近くにそんな禁断の愛を育んでいる奴がいるわけだ……だけどなぁ……。
俺は教師の仕事に誇りを持っているわけで。そういうのは絶対ないと思っている人間でもある。
どうすればいい……どうすれば……。
***
――翌日の昼休み
「付き合っちゃえばいいんじゃない?」
とりあえず禁断の愛真っ盛りな保健室に来てみた俺。
「まぁ、お前らはそう言うだろうけどなぁ……」
「だって好きなんでしょ?紗菜ちゃんのこと」
そう言いながら猿飛の膝の上でポッキーを食べている沙羅。……って、お前いっつも何か食ってんなぁ。
「ポッキーおいしい?」
「うん♪」
「でも、沙羅のほうがもっとおいしいかもよ?」
「やだぁ〜」
……って、
「人がマジで悩んで相談してんのにイチャつくなっ!!嫌がらせか!?」
「そう、はっきりしないチカちゃんへの嫌がらせ」
「ひでぇ……」
でもまぁ……と猿飛。
「俺様達の意見だけ聞いてもそれは偏ってるから、他の人にも聞いてみるといいんじゃない?友達なら話しても平気でしょ?」
「まぁ……そうだよな」
あいつらなら……と思い、俺は放課後2人を飲みに誘った。