短編
□教師失格
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――飲み屋にて
「お前も大変だよな、世界史の教師が日本史教えるなんてよ」
「そんなこともねぇよ」
「チカちゃんえらいよねー。俺、絶対ムリ」
「「お前は頭がアレだからな」」
「えー、ひどっ!」
いつものようにたわいもない話をしながら俺達は酒を飲んでいた。
……そういえば、といきなり政宗が切り出す。
「最近ここら辺、通り魔多いらしいぜ」
「ああ!この辺で夜出歩いてる女の子ばっかり狙うあれ?」
通り魔のうわさは俺も知っていた。ついこの間も隣の学校の女子生徒が襲われたらしい。
「物騒だよなぁ……気をつけねぇとな」
そんなことを言いながらこの日はこれでお開きとなった。
***
帰り道、俺は2人と別れ帰宅しようと暗い道を1人歩いていた。
時刻は午後8時。少し暑い秋といえど夜はさすがに寒く、暗い。早く帰って寝るか……そう思っている矢先だった。
“キャーッ”
ふいに聞こえた女の悲鳴。驚いたが俺は次の瞬間にはそちらへ駆け出していた。
***
俺の目の前に広がった光景……。
1人の女子高校生が刃物を持った男に今にも刺されそうになっている。瞬時に俺はそれがちまたの通り魔だと悟った。
そして反射的に女子高校生の前に飛び出していた。男は構わず刃物を振り回し、俺の手を刃物が少し掠めた。
俺は俺の腹に蹴りをいれ、刃物を落とすと素早く首筋に1発いれ、相手の意識を奪った。
「大丈夫か?怪我はねぇか?」
女子高校生に声をかける
よく見るとバサラ学園の制服。
「お前、バサラ学園の生徒か?学年、組、名前は?」
そう聞くと
「……2年4組の紗菜三雲です」
事もあろうか彼女は俺の担当するクラスの生徒だった。
とりあえず警察を呼び、通り魔を引き渡し、俺はどうしてこんな時間にこんな場所へいるのか……と尋ねた。
「自転車がパンクしてしまって……おまけに溝にはまって動けなくて……そしたら……」
こいつは自転車のためにこんな時間まで頑張ってたのか……。彼女の手にそっと触れると手は冷えきっていて、震えていた。
「とりあえず、あぶねぇから送ってやる」
自転車を溝から引き抜き俺は三雲を送ることになった。