Phantom road
□episode 13
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目を覚ましたアレンは大きな扉の前にいた。
「その扉は押しても開かんぞ」
「!?」
「ここに何か用か?」
後ろから聞こえた声にアレンは驚いた。だが柱の影でその人物の顔は見えない。
「…どうして開かないんですか?」
「その扉の中にはここの守り神がいて、ボクの曾祖父が内から封印しているんだ。ここに用があったんじゃないのか?」
「別に…、ただ進んできただけだから…。この扉…どうにかして開けられないんですか…」
「開けられない。戻ったらどうだ?そんなところ進んでどうする」
「ただ進む。立ち止まりたくないんだ」
そう語るアレンの目には光が無かった。希望を失った絶望に埋もれてしまった目。
「左腕もないのにか?」
「!」
「別に文句をつけるつもりはない。好奇心から聞いてるだけだ」
「…あなた誰ですか?」
「黒の教団アジア区支部の支部長バク・チャンだ」
アレンは冷たく言い放った。だがその人物は臆することなくそれに答えた。
「アレン・ウォーカーくん。キミ、ここの事務員にならないか?」
「え?」
「これからはサポートする側に回るんだよ。別の道を探すんだ。エクソシスト以外にも黒の教団にはたくさんの役職がある、何か出来ることがあるだろう。
そうすれば神もキミを咎めたりはしない」
「神?そんな事どうだっていい」
アレンの目には涙が溜まっていた。それは悔しさからきたのか、悲しみからきたのかは本人しかわからない。
「僕は僕の意志で誓いを立てた!!アクマを壊すことを自分に…っ!!共に戦うことを仲間に、救うことをこの世界に、死ぬまで歩き続けることを父に誓ったんだ!!
開けよ…ちくしょお…っ、
僕が生きていられるのはこの道だけなんだ」
何度も扉を叩いた手からは血が流れ扉にもそれが染み付く。そんなアレンにバクは近付いた。
「わかったよアレン・ウォーカー。
キミのイノセンスは死んではいない。だがそれを告げる前にどうしてもキミの気持ちを確かめておきたかった。
咎落ちを知り死の苦しみを味わったキミが自ら再び戦場に戻る気があるのかどうか。新たな咎落ちを防ぐためにもボクとコムイは知る必要があったんだ。
“どうだっていい”はちょっと言い過ぎだがな」
その言葉にアレンは笑顔を取り戻した。
「行こう」
「あ…ルナ、女の子が僕の近くにいたと思うんですけど…」
「…見に行くか?」
「…?」
バクの重い表情にアレンは首を傾げた。
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