Phantom road
□episode 04
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「昔ひとりの子供がマテールで泣いてたの。
――――…
―――…
――…
―…
その子は村の人達から迫害されて亡霊が住むと噂されてたこの都市に捨てられた。
「ぼうや…歌はいかが…?」
マテールの民が去って五百年。人間が迷い込むのはこれが初めてじゃなかった。
私は人間に造られた人形。人間の為に動くのが私の存在理由、
「うた?ぼくのために歌ってくれるの…?誰もそんなことしてくれなかったと。ぼくグゾルっていうの…歌って、亡霊さん」
―…
――…
―――…
――――…
あの日から80年…
グゾルはずっと私といてくれた」
彼女らの過去にアレンは眉を下げる。ルナは表情ひとつ変えずそのやりとりを見ていた。
「グゾルはねもうすぐ動かなくなるの…」
それは彼が死ぬということ。
「最後まで一緒にいさせて、グゾルが死んだら私はもうどうだっていい。この五百年で私を受け入れてくれたのはグゾルだけだった。
最後まで人形として動かさせて!お願い」
それは小さな願い事。
だがこの世界ではその小さな願いでさえ叶えてはくれないのだ。
「ダメだ」
『!』
先程まで握られていた手から離れた体温。
神田は起き上がり少々息をあらくしながら言葉を続けた。
「その老人が死ぬまで待てだと?この状況でそんな願いは聞いてられない…っ。俺達はイノセンスを守るためにここに来たんだ!!
今すぐその人形の心臓を取れ!!」
『「!?」』
神田の思いがけない言葉にルナ達は驚いた。だがルナはすぐにその表情を変えて立ち上がった。
『最後まで一緒にいれるのに…、守ってあげられるかもしれないのに…取れないよ』
「ルナ…」
『私は取らない』
「…僕も、取りません」
その言葉に腹を立てたのか神田は自分の枕となっていたアレンのコートをアレンに投げつけた。
「そのコートはケガ人の枕にするもんじゃねぇんだよ…!!エクソシストが着るものだ!!」
神田はコートを羽織ると六幻を持って立ち上がった。そしてララとグゾルの元へと歩んでいく。
「犠牲があるから救いがあんだよ、新人」
『犠牲…』
その言葉に表情を重くしたルナ。それに気付いたのは近くにいたブラッドだけ。
神田は六幻をララに向けた。
「お願い、奪わないで…」
長く鋭い刃が向けられる。
その間に立ったのは紛れもないアレン・ウォーカーだった。
「なら僕が犠牲になりますよ」
「!」
「僕がこのふたりの“犠牲”になればいいですか?ただ自分達の望む最後を迎えたがってるだけなんです。それまでこの人形からイノセンスは取りません。僕が…アクマを破壊すれば問題ないいでしょう!?
犠牲ばかりで勝つ戦争なんて虚しいだけですよ!」
『「!」』
――バンッ
神田はアレンを殴り膝をついた。殴られたアレンもしりもちを突き倒れた。だがルナはそれに寄り添うことなくただじっと見ていた。
「とんだ甘さだな、おい…。可哀想なら他人の為に自分を切売りするってか…?テメェに大事なものは無いのかよ!!」
「大事なものは…昔失くした。
僕はちっぽけな人間だから大きい世界より目のまえのものに心が向く。切り捨てられません。
守れるなら守りたい!」
――見つけた
『!逃げてっ!!』
「「!」」
「グゾル…」
グゾルとララの腹にアクマの槍が刺さった。そして吸い込まれるように地面の中へ。
そして…
『…っ!!』
「このまま空まで連れてってやる!!」
「ルナ!!」
別のアクマに上空へと連れて行かれたルナをブラッドが追い掛けて行った。
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