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□素直じゃない君
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「俺はお前の事兄弟だなんて思ったことは一度もない」
アッシュが自分の腕を掴んだルークの腕を振り払う。
夕日の茜色が差し込むアッシュの部屋にその言葉はまるで波紋を生むように広がった。
ルークは今言われた事が信じられず目を見開くばかりだ。
足元には手からすり抜けた部活道具が無残に散らばっていた。
「いま・・・なんて・・・?冗談・・・だよな・・・?」
途切れ途切れに紡ぎ出すその声は掠れて震えていた。
ルークとアッシュは唯一無二の双子の兄弟だ。
ルークはその繋がりを・・・
アッシュとの繋がりを何よりも大切にしていた。
「だから、お前を兄弟だと思ったことは一度もないと言ったんだ」
その想いを。
大好きな双子の片割れの言葉が無残にも切り裂く。
「・・・嘘だ」
ルークは呆然と呟いてアッシュに縋り付く。
「嘘だ嘘だうそだうそだ「うるせぇ!!!」
だが、否定の言葉はアッシュの怒号に掻き消された。
「嘘じゃねぇ。お前の事は兄弟だと思えねぇ。わかったらさっさと消えうせろ!!」
ルークは何かを言い返そうと口を開こうとするが、開いた口から声は出なかった。
ルークは手を喉に当てて苦しげに眉にシワを寄せた。
あまりの事に声を失ってしまったようだった。
苦しくて苦しくて仕方がない。
頭の芯が熱くて真っ白だ。
考えなければならないのに何も浮かばない。
「ルーク・・・?」
様子のおかしいルークに怪訝そうにアッシュが声をかける。
「−−ッ!」
だが、ルークはアッシュに声を掛けられた瞬間部屋を飛び出して行ってしまった。
アッシュは慌ててルークを追いかけるが、ルークは開け放した玄関の扉を残して消え去った後だった。
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どうして・・・
どうしてこんな事になったんだ・・・
ルークはがむしゃらに走りながらこれまでの事を思い返していた。