BASARA多め

□秋風に吹かれる僕の重大なお願い
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まだ僕はこの世界を嫌いになんてなっていないんだ。
どんなに暗くて血生臭い沼に飛び下りようとも、
人の視線という鎗が僕の体を蝕んだとしても、
僕はこの世界を嫌いなんてなれないし、怖いとも思わない。


だって彼女がこの世に居るんだもの。


「佐助?どうしたの?」
「いや。只そろそろ冷たくなって来たなーって思って」
「つい最近まで暑かったのにね」


そうやって僕の隣でにこりと笑ってくれる君が居るから、
僕はまだこの汚れた世界から飛び下りようと思わない。



「そろそろあの森も赤色に染まるんだろうね」
「また見に行くんじゃない?真田の旦那が行きたそうだし」
「兄上は団子目当てでしょう?」
「ははは。言えてるねー」


僕が笑うと安心したように君もまた微笑んだ。
でも視線は此処から見える遠い山に向いていて、
僕を見てくれていない。



「(俺様もそろそろ重症だな)」


嫉妬なんてらしくないと思ったけれど、どうしてもしてしまうんだ。
いっそ君を僕の物にしたいけど、君は姫で、僕は只の忍で
その溝を埋める事は今の時代じゃぁ無理なんだろうね。



「(なら遠い未来だったら)」
「佐助、さっきからぼーっとしてるよ?」
「んー?気のせいじゃない?」
「気のせいだったらいいんだけどね」


未来だったら君に素直になれたかな?
未来だったら君に笑顔で会える事ができたかな?
そうだったらいいのにね。君を愛せたのにね。



「ねぇ佐助」
「んー?」
「ずっと一緒に居ようね」
「…ああ」


未来なんて我侭は言わない。
只この関係が一生続きますように。



秋風に吹かれた僕の重大なお願い
                    神様 聞いて







2007.10.2


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