紅色ノ旋律

□第241話〜第270話
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第241話 天に召します我らの神よ


「あっちだ!南南西の方向に急げ!」
「結構遠いけど大丈夫!?」
「僕らなら平気です!そんな柔に育てられてはいない!」
「もう充分回復は致しました!余裕です!」
「上等!」


一向は走り出した。
仲間の、ジークの居るであろう場所に向かって。
闇夜と月光により作り出されたそのシルエットは、教会の形を浮き上がらせた。
不気味なまでのそれは、ただ静かに5人を見下ろすのだった。


一方ジークは、ステンドグラスの真下で力尽きていた。
望みはただ一つだと、ステンドグラスの中央に描かれた女神に祈りを捧げる。
どうか、どうか。
あと一刻でいい。だから。
その瞬間が来るまで仲間が来ないようにと。
必死に、朦朧とする意識の中でもそれだけを強く願う。
まさか仲間に。
己ですら知らぬ未知なる自分の。
調査の結果がその通りならば、そのような滑稽な姿を見られる訳にはいかないと。

無情なまでに、彼らの足音は一点の漆黒を追うのであった。


作者コメ
決して宗教の勧誘では無いです。
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