紅色ノ旋律

□第241話〜第270話
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第244話 解毒飴の罠


「…飴を、誤って飲んでしまったのだ」

暗闇の教会の中、ジークが静かに口を開いた。
リジア達は黙って頷き、ジークの声に耳を傾ける。

「著書で調べた…この飴のことなど、様々なことを。しかし、私は…」


弱々しく、力ないその声は、その場にいる全員の胸を締め付ける。
ジークから、こんな声が出るなんて…。
いつも淡々と話すジークからは想像もつかない。
不安や恐怖の入り交じる、切ない声…。

「ジーク、安心しろ!夕方、あの子供と父親に会ったんだ!!」

「そうだった!慌ててたから、すっかり忘れてたけど、その時解毒飴をもらったから!!」

リジアは、ステンドグラスの下にいるジークに、飴を差し出した。

「…ありがとう」

コロン、と歯に飴が当たる音がした。
ジークが飴を食べたんだと全員が安心する。
もう、これで大丈夫…そう思った時だった

「…ぐっ!!」
「ジーク!?」
「…っ、あぁぁああっ!!」

苦しみの混じったジークの声が響く。


「まさか…あの父親!!」
ティアラの記憶が夕刻に戻る。

『飴玉?ああ、あれをあげたのかい?』

その後、自分達に飴を渡し、安心させるように微笑んだ…。

今思えば、落ち着きすぎている言動だった。

「…やられたわ!」
「それじゃあジークは…!!」

焦り始めたリジア達のうしろで、教会の扉がギィィ、と不気味な音をたて開いた。
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