紅色ノ旋律
□第181話〜第210話
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第181話 闇の向こうには
暗い廊下を歩いてゆく。
そこから先はもう迷宮とはなっておらず、ただ一本の長い廊下が続いていた。
ハルヴェルの容態を考え、走る事なく、しかし急ぐように先に進む。
奥に行くにつれ、次第に廊下が明るくなってゆく。
それは、ゴールが近い証明。
「…ここか」
リジア達は足を止め、目の前にある一際大きな観音開きの扉を見つめた。
似ていた。
あの時に。
ハルヴェルの父と戦った、あの悲しい出来事に。
「今回私は戦闘不参加にさせてもらう。ハルヴェル様を戦闘の場に置けぬし、一人にもさせられないのでな」
「わかった。頼むジーク」
「ああ」
そうして、リジアとユニとティアラの三人が扉を開ける。
全員が全員、既にぼろぼろだったがそれでも進みたいと思った。
拭いきれない不安と嫌な予感を抱えながらも、ただ助けたいと。
それだけの気持ちで。
「どうやらネズミが来たようだ」
大勢の密売人が集まる中、その中央に居た深くフードを被った男が低い声を放つ。
「…ま、ネズミと言えばネズミだけど、あんたらよりはマシなネズミだな」
「僕もそう思うよリジア」
「そうね」
三人はそれぞれの武器を構え、そう言葉を交わす。
決して、殺気を消そうとはせずに。
作者コメ
ハルヴェルは戦闘不可だろうなと思い、ジークと共に不参加にさせました。
彼らには強い信頼があるからきっと大丈夫だと思って。