短編

□許しあうこと4
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始業のチャイムは少なからず俺を急がせた。

ギリギリの所で教室に滑り込む。隣で女子がきゃーきゃー言っているが、まぁいつもの事なので気にしない。


それより、今日は達成しなければならないノルマがあるのだ。



「チャーイナー」



ぎろり、という言葉が正しいのだろうか。

隣の席で本を読んでいたチャイナはチラリと俺の姿を確認する。



「…何ネ?」


「いや、おはよう」


「…おはよ」


相変わらずのそっけなさでチャイナはあいさつをしたあとすぐに目を本へ向ける。



「チャイナ…、お前昨日どこ行ってたんでィ」



俺がそう言った途端に、チャイナは硬直した。

まさに石のように。




「………なんで?」





チャイナの声はドスが効いた低い声だった。

…やっぱりまずかったか?


「や…昨日お前を見かけて」



「……」



暫しの沈黙が俺たちを襲う。

その時だった。


「…チャイナ?」


チャイナはふるふると肩を震わせながら俺に目を向け、鬼のような眼光で睨み付けてきたのだ。



その鋭い目に、一瞬で凍りついた。




「…言ったダロ。私に関わると不幸になるって」



チャイナは視線を一向にずらそうとはしない。

ただじっと俺を見ていた。

しかし俺も引き下がるわけにはいかない。



「…んな事あるわけねぇだろィ。なんでそんな事言うんでィ?」


「だって!!」




ガタリ、チャイナが立ち上がった衝撃で椅子が倒れた。



「あーあー…ったく」

「触るな!!」









「……!」


「私に関わった奴は皆不幸になるのヨ!!だから、もう近付くな!!」




凄まじい剣幕でまくしたてるチャイナ。

しかし顔に手を当て疲れきったようにこう言った。



「みんな…皆私がいるから駄目になっちゃうアル…!お願いだから」
「おらー席つけよー」





 
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