短編

□Ark
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ーー箱庭を騙る檻の中で禁断の海馬に手を加えて、驕れる無能な創造神にでもなったつもりなの…ーー








「兄ちゃん…」

「あ、神楽?」


「好きアル」




「はは、ありがとう」



兄ちゃんは私の頭をぽん、と撫で何処かへ出かけてしまった。


「……」


頭には少しばかり温もりが残っている気がした。

あぁ貴方はいつもそうだ。

私がいつも好き、愛してると言ったってそうやって頭を撫でるだけ。


こんなにも愛しくて愛しくて堪らないのにーー




この気持ちは紛れもなく「恋」だ。

いつからか私が兄に向ける想いは兄妹ではなく一人の男に変わっていた。


兄ちゃんを見ていると胸が高鳴る。

兄ちゃんの笑顔を見ているとどうしようもない想いに胸を締め付けられる。



「…どうすればいいネ…」




もう兄ちゃんに顔を合わせたくない。

合わせれば私が何をするかわからないーー





『我々を楽園へ導ける方舟は…』



「!?」



『哀れなる魂を大地から解き放つ…ーー』




「え…」





人間の声、じゃない…


頭に直接響いてくるような、そんななんともいえない声だった。



「だ、誰ネ…?」


おそるおそる尋ねてみる。



『…驚かせてしまってごめんなさい』



声の方へ振り向くとそこには綺麗な黒髪の少女が立っていた。

さっきまで誰もいなかったはずなのに…

少女はふふ、と儚げに微笑むと右手を差し出してきた。



『…あなたを楽園へ連れていってあげる』

「何…?何言ってるネ?」


正直に言えば、怖い。

この少女が醸し出す雰囲気はいままで感じた事のないような不気味なものだった。


けれどどうしてだろう、この雰囲気に惹かれてしまうのはーー



『Arkはあなたを楽園へ連れていってくれる。…愛する人と共に』



愛する人と…共に楽園へ?



「兄ちゃんと…楽園に行ける?」



少女はもう一度微笑み返す。気がつけば差し出された少女の右手には銀色に煌めく刃物(ナイフ)があった。






『楽園へ還りましょう…?』






気がつけば少女は消えていた。

しかし少女が握っていた銀色の刃物は私が握っており、その刃先は鮮血で染まっていた。




「か…ぐら…」




さぁ、楽園へ還りましょうーー…







END



海月様

こ、こんな感じでよろしいでしょうか??サンホラの混合…思ったより難しかったです。ただ自分もサンホラーなので楽しかったですね(*´∇`*)

Arkが出す雰囲気が上手く伝わっていればいいな、と思います♪
リクエストありがとうございました!





元ネタ…Sound Horizonより「Ark」

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