短編

□君の強さ、弱さ
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霧野は強いと思う。

いつもしゃんとした顔をしていて冷静で…

違った事は違う、とはっきり言える強さは俺にないものだった。


でも強いからこそ、内側に脆く弱いものを持っている。


霧野は…



「神童ーっ帰ろうぜ!!」


霧野がヒラヒラと手を振って駆け寄ってきた。


「あぁ霧野。帰ろう」



霧野は今日の練習の反省とか宿題の事などを話す。

それは紛れもなくいつもの霧野だ。


「神童、お前最近は悩みとかないか?」

「え?」


「お前抱え込むクセがあるからな。困ったらいつでも相談しろよ」




…どうして霧野はいつもこうなんだろう。

自分の悩みとか弱い所は必死で隠すのに、俺の心配ばかりしてくれる。


もっと色んな霧野を見たいのにーー



「…え!し、神童っ!?」




あわあわと慌てる霧野が目に映った。

あれ…俺…


「な…涙…」

「何泣いてんだよ!!突然はやめろっ」




霧野は慌てながらも手で涙を拭いてくれた。

あぁ駄目だな、俺…


こうやって泣いてばかりだ。



その度に霧野を困らせて。



「ご…ごめんっ…」


「いーから…何があったんだ?」



「霧野は…どうしていつも強いんだ?」


「は?」


霧野がきょとんとした顔をする。


「霧野は俺なんかに構ってくれて…俺の弱さを受け入れてくれるのに…霧野は俺に弱さとか見せないだろう?」


「…んー…」


「だから霧野の弱い所も見たいなって…強さばかりじゃなくて…」

「ぶっ…はははっ!!」

「え!?」





霧野はいきなり腹を抱え込んで笑い出した。

え!?俺何か変な事言ったか?




「き…霧野…?」


俺の不安気な表情を察したのか霧野はごめんごめん、と涙をふきながら言った。


「あのな、俺が強くいられるのはお前のおかげなんだよ」



「え…」



真っ直ぐに俺を見る瞳は神秘的な色で思わず吸い込まれそうだ。



「お前がいてくれるから、俺はいつでも笑ってられるんだ」


「き…霧野…」


「ちょ、なんで泣くんだよっ!!」


「いや…嬉しくて…」

「あーもー…」



しょうがない奴だな、霧野がはにかんで言うものだから俺もつられて口角が上がってしまう。




「ありがとう、霧野」


「何がだー?」



「…なんでもないっ」







俺たちは笑いながら帰路についた。





END


後書き

これくらい男らしい蘭ちゃんが好きです(*´∇`*)



 

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