短編

□dear my brother…
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バラガキ編後(?)




あの乱闘からしばらく経って、俺の体調も大分回復した。

俺は今江戸の町中を見廻りという体を成してぶらぶら散策している。

片手には…一枚の紙切れ。


この行為は単なる自己満足なのかもしれないが、俺のあの人に対する思いは自己満足なんかじゃない。

…そう思いたいが



人が行き交う江戸の町はどことなく俺を避けている感じがした。



「あ、大串くん」


「ん…?」


ぼーっとして歩いていたため気づかなかったが、目の前には紫の番傘を持った少女が立っていた。


「何、ぼーっとしてるネ?」

「…チャイナ娘か。何してんだこんな所で」



チャイナ娘は青い瞳をこちらへ向けて怪訝そうに俺を見た。


「それ…兄ちゃんへの手紙?」



俺の質問には答えないつもりらしい。

しかしチャイナのそれ、という指事語は間違いなく俺の手にある紙切れを指していた。

チャイナはどうやら一連の出来事を把握しているらしい。



「…だからなんだ」


低い声で言ってしまった。

しかしチャイナはしれっとして


「別に、ただ羨ましいなと思っただけアル」


ピキ、


それは…


「何が言いてェんだテメー」

「そのままヨ。私は手紙なんて送っても破って捨てられるネ」



はっとチャイナ娘を見るとその瞳が揺れている。



「…チャイナ娘」

「思いが届くってすごい事ネ。私は…ずっと立ち止まったままアルな」


風が俺とチャイナ娘の間を吹き抜ける。

チャイナ娘はふわりと笑って溜め息をついた。



「…変な話してごめんアル、じゃーネ!」

「あ、おいチャイナ娘!」



チャイナ娘は逃げるように走り去っていく。




「……立ち止まってる…か…走ってんじゃねーかよ」


片手の紙切れをくしゃりと握った。




END


土方のじゃべりかたって…


 

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