短編
□罪人たち5
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愛してる、なんて所詮言葉だけのものなんだよ。
じゃあ今「愛してる」って言ってみてよ、
ほら、簡単に言えるじゃない。
結局そんなものなんだ。
気持ちが大切だとか、そんなもの必要ないんだ。
ーーなのに俺は間違ってた?
神楽が欲しくて、自分の物にしたくて無理矢理犯した。
神楽は手に入ったよ?逃げられない枷を作ったんだから。
なのになんでだ、なんでこんなに…
心が痛いんだーー?
屋上の風は冷たく俺に吹き込んだ。
神楽に近付いた目的はただ本当に会いたい、と思ったからだ。
吉原での事を阿伏兎に聞き興味がわいた。
(あのひ弱な兎が、…ねェ)
そしてあの月夜の日ーー
一瞬で心を奪われた。
神楽を、妹を手にいれたいと思ったのだ。
倫理的に狂ってる?そんなの百も承知だ。
もう誰にも渡さないように…
神楽には「子作りのため」なんて言ったけどそんなのは嘘っぱち。
ただ単に神楽を手にいれたかっただけなんだ。
そして「神流」という枷を作った。
神流がいれば神楽は逃げようとは思わないだろう。
思惑通りに神楽は逃げようとはしなかった。
****
神楽は神流を見るたびに苦痛に歪んだ顔をする。
きっと自分の娘なのに愛せない自分を憎んでいるんだろう。
自分はというと神流への愛は純粋だった。
兄妹だとか、近親相姦だとか…そんなもの全く気にしなかった。
ただ神流の笑顔は神楽そのもので顔が綻んだ。
それとは裏腹に神楽はげっそりと日に日にやつれていった。
まぁ無理もないが、そんな神楽を見ていると何故か心が痛んだ。
なんだ、これ。
俺の望みは叶ったはずなのに…
そのモヤモヤした気持ちを吹き飛ばすように、神楽を犯したり殴ったりする日々が続いた。
ある日神楽が俺にパンチを仕掛けてきた。
もちろん俺は避けたが、壁の破壊具合を見た所本気だった。
「ママ怖い、怖いよ」
神流の言う通り、その時の神楽には恐怖を覚えた。
「……神楽…?」
「…う……ヒッ…」
神楽の目からは涙が流れていた。
なんで…なんで…ーー?
俺はどうすれば良かった?
地球に来てお侍さんに会えば何か変わると思った。
けど何も変わらなかった。
それどころか酷くなったみたいだ。
(いきなり倒れるなんて一度もなかったのに…)
俺は何がしたかったんだ。
神楽を手にいれる?
実際もう神楽は手中にあるじゃないか。
それ以上に何を望む?
俺は何をーー
「神威っ!!」