短編
□許しあうこと2
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「時間は20分だけだからな」
厳つい男がガラス張りの障子越しに言ってきた。
後ろには二人の若い看守、そしてその間で手を拘束されているのは…
「久しぶり、神楽」
にこりと笑う、しかしその笑顔はどことなく寂しげだった。
「会いたかったネ…兄ちゃん」
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「学校はどう?転校したんでしょ?」
「別に普通アルヨ。心配する事ないネ。」
何気ない会話をするのも私達兄妹にはとても貴重な事だ。
何しろ兄は無期懲役で服役中なのだ。
「心配するに決まってるだろ?俺はここから出れないしお前がまたあんな事になったら」
「…大丈夫アル。あんまり皆と話さないようにしてるネ」
そう言うと兄は複雑そうな顔をしてそう、と呟いた。
優しい、とても優しい兄ちゃん。
昔からいつも私の心配ばかりしてくれていた。
母親を早くに亡くし、父親は海外を飛び回っている。
一人で淋しくないようにと兄ちゃんはいつも私の傍を離れなかった。
しかし兄ちゃんは私に優しかったけれど周りの人間に心を開く事はなかった。
その代わり喧嘩に明け暮れ血を浴びる毎日。
当然印象は悪く、持ち前の美顔から女たらしとまで噂されるようになってしまっていたのだ。
「兄ちゃんまた服汚してきたアルナ!?もー大概にするヨロシ!」
「えーだってそれ俺の血じゃないしー」
「それが問題なのヨ!!」
こんな会話が日常茶飯時だった。
それほど兄ちゃんは凶暴だったのだ。
そしてあの事件が起きた――