短編

□罪人たち4
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「私がここに来たのは間違いだったアル。ちょっと銀ちゃん達に会ったら変わると思ったネ…だけど何も変わらなかったヨ」



神楽は淡々と語った。


銀時や土方は神流を連れて席を外している。


「私は総悟を裏切ったネ。もういいでしょ?私、神威と帰るネ




「おい神楽」



去ろうとする神楽を沖田は呼び止める。

神楽は構わずに立ち去ろうとするが沖田は神楽の前に立ち行き手を拒んだ。



「歯、食いしばれ」

「はっ…」




バキッ











「っ!?…」


渇いた打音が狭い病院の廊下に響く。

それは沖田が神楽を張り飛ばした音だった。



「そ…そーご」

「お前の根性叩き直してやりまさァ」


フワリと沖田は神楽を優しく抱き締めた。

それは二人にとって当たり前の事だったのに、いつの日か叶わない思い出となっていたのだ。


「人妻に手出す気はねーから…今だけでさァ」

「人妻とか言うなヨ馬鹿…」




神楽の赤くなった頬を雫が伝う。


ずっと想っていた温もりを噛み締め、神楽は沖田の背中に手を回す。



「しっかりしろィ神楽」

「!!…」

「神流はお前の娘だ、ちょっとのレッテルじゃへこたれねーよ」

「…私のせいであの子を苦しめてるアル」

「本当にそうか?一番のアイツの苦しみはお前がいなくなる事じゃねーのかィ」

「それは…」

「神流はお前を愛してる、お前も神流を愛してる。それで十分じゃねーかィ」

「!!…」




いつの間にか沖田の肩には涙の跡が出来ていた。

それは紛れもなく神楽のもので…



「…っう…ヒ…ク…そーご…」

「なんでィ」

「私…ずっと苦しかったネ…そーごに会えなくて…皆に会えなくて」

「…俺も同じでさァ」

「ごめんなさい…ごめんなさいアル…そーご…っ」

「…お前が謝る必要なんざどこにもねーさ」

「私…もう逃げないネ…ちゃんと現実と向き合う」

「うん」

「ずっと神流に申し訳ない事してしまったネ…」

「大丈夫、神流だってわかるさ」



しばらく二人はそのまま動かなかった。

思い出は思い出しかない、

過去は過去でしかない、



どうしようもない時間の狭間の中で私は未来を描こう――




時間は動き出した



 
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