短編

□罪人たち4
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神流は私の心の支えだった。

この子がいるから私は生きていける…

この子がいるから私は何をされても堪えていける…


そう、神流がいたから私は強くなれた。


でも神流が成長するに従って見せる面影は父である神威を映していた。

もちろん容姿は私に瓜二つだったけど、時折見せる目は神威そのものだった。

神流に神威の面影を見るたびに、体がどうしようもないほどに過剰反応を見せる。

それは言い知れぬ恐怖だ。

そして禁忌を犯した罪の意識…


神流には何も罪はない。

罪人は神威と、そして私。


私達が罪を犯したのに、それは神流も背負う罪である。

申し訳なさで一杯だ。



なんの罪もない神流に罪を背負わせてしまった。


私は神流を愛しているのだろうか。

自分の娘を愛しく思えているのだろうか。

自分の娘なのに愛しているかわからない、そんな自分がたまらなく嫌だった。


神流が「ママ」と呼ぶたびに怖かった。

この子に何もかも見透かされているんじゃないかと不安になった…



総悟や銀ちゃんに会いたい、

ここから逃げ出してしまいたい。


私はそう思う度に神威を恨んだ。

そう、アイツが事の発端だ。

私がこんなに苦しいのは全て神威のせい。



憎い


憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い






今まで感じた事のない憎悪が私を支配していた。



「パパーっ!!」

「あはは、神流は可愛いネ」


何を心にも無いことを。

コイツにとって神流は娘ではなく、可能性を秘めた夜兎なのだ。

神威にとって私は子を成すための道具、そうやって生まれた神流を愛する人間がどこにいるというの?


あぁ嫌、何もかもが煩わしくて仕方がない。



無償に腹立たしくなり、私は神威に拳を向けた。

もちろん神威は避けたが、その拳は壁に当たり凄まじい轟音が響いた。


神流は驚き泣いている。

ママ怖いよ、いつものママに戻ってよ



これが本当の私なのよ。

あなたがパパと呼んだ男はね、私とあなたに罪人というレッテルを貼りつけた張本人なの。


私やあなたがこんなに苦しいのは全部この男のせい。





涙が一筋頬を伝った。



 
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