短編

□罪人たち2
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「神楽!!」

「神楽ちゃん!!」

銀時や新八は神楽に向かって叫ぶ。

しかし神楽は応えない。

応えられないのだ



神楽は目を閉じて意識を無くしベッドに横たわっている。

「…沖田くんさァ、神楽と何があったわけ?」


沖田が病院に駆け込んだのは20分ほど前の事。

銀時や新八は「神楽が倒れた」と沖田から電話を受けて病院に飛んできたのだった。


「いきなり倒れるなんておかしいだろ…」

「倒れたいのはこっちの方なんですがねィ…俺と話してたらいきなり倒れたんでさァ」


沖田はため息をつき言った。

そして流れるあの言葉――


『もう結婚して子供もいる』



あれは本当なんだろうか?


神楽と俺は確かに愛し合っていた。

それは嘘ではなかったはずなのだ。

それなのに何故…


「総悟」

土方が三人の前に現れる。

沖田は土方の隣にいる小さな女の子に目を奪われた。



「神流!お前神楽と散歩に行ったんじゃなかったのか?」

病院に来た神流は下を向いて俯いていた。

「…ママは大丈夫なの?」

「あー…今は少し寝ているだけだ、心配する事ねーよ」

「ママって…」


沖田が口を開く。


「…沖田くんこれは…」

銀時は罰が悪そうに言った。

神楽と沖田が付き合っていた事など知っている。

しかしはた、とある考えが頭に浮かぶ。


もしかして神流は…沖田くんの子供ではないか?

それなら神流の歳だって納得がいく。


銀時は妙に晴れやかな顔で沖田の肩を叩いた。


「コイツは神楽の娘の神流だ。」

「む…娘っ!?」

「…身に覚えはないのかね総一郎くん」

「!!」


覚えがないわけではない。

子供が出来るなんてありえない、という事ではないのだ。



沖田はへにゃっと頬を緩ませ神流を見る。


「……」

神楽と瓜二つな容姿。

残念ながら自分の遺伝子が受け継がれている様な節は見当たらないが、 確信があった。


――神流は俺の娘だ



きっとそうだ、時期的にも俺が一番妥当。

神楽が俺を裏切るだなんてありえない。

きっと何か理由があって宇宙へ行ったんだ…


「名前はなんていうんでィ」


「…神流」


少し警戒心を持ちながら神流が答えた。

沖田は無償に神流が愛しく思えてぎゅっと抱き締める。



「……」


その様子に銀時も土方も肩を撫で下ろした。

土方の心中のモヤモヤは晴れなかったが。

「神楽さんの付き添いの方?話があるのでこちらへ」




****



「…ストレス…」

「えぇ、身体的にも精神的にもかなりのストレスが今回の原因だと思われますね」


神楽が倒れた原因はストレスがかかった為だった。

子育てに疲れノイローゼになるのはよくある事らしい。


とにかく大病などではなかったのでその場にいた全員が安心の顔を見せた。

しかし…


「それと…体の至るところに痣の様な痕があるんです」

「痣?」

「あいつはエイリアンバスターをやってるんでさァ、傷くらいあってもおかしくないでせェ」

「いや…あれは明らかに人の拳を受けた痕です。それと何か棒の様な物で突き刺された痕もありました」

医者は物思いに語った。

…どういう事だ


神楽はエイリアンバスターをしていたんじゃないのか?

人の拳って…ハゲとでもやり合ったのか?


「ストレスといい痕の件といい…少し彼女に目を配った方がいいですね」


部屋全体に重い空気が流れた。


 
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