短編
□罪人たち
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「…どういう事かな神楽ちゃん」
「見たまんまヨ、銀ちゃん」
神楽は万事屋のソファに銀時、新八と向かい合う形で座っていた。
しかし神楽は1人ではない。隣には−−
「こんにちは、銀ちゃんさん」
可愛らしい女の子…がちょこんと座っている。
「いやいや、お前が万事屋を出てって何の連絡も寄越さず丸5年…本当に久しぶりに会ったと思ったら子連れって…何の冗談だよホント」
銀時は頭をボリボリ掻いて言った。
「でも銀さん、こうして5年ぶりに会えたんですから。神楽ちゃんもお母さんになったって祝福してあげましょ」
新八は相変わらずにこにこしながら言う。
姉上にも話さなきゃ、と付け加えられた。
そう、神楽がこの万事屋に来るのは5年ぶり。
神楽は5年前、父である星海坊主と共にえいりあんばすたーとして宇宙へと旅立ったのだ。
しかし神楽には銀時や新八には言えない事情があり、子供を身ごもった…
そして5年の月日を経てひょっこり万事屋に現れたのがついさっきの事。
「どころで君、お名前は?」
新八は神楽の隣に座る女の子にお茶を出すと優しく問いかけた。
「私は神流(かんな)っていいます。ママの名前に似てるでしょ?」
神流と名乗った女の子はにかっと母親そっくりの笑顔を見せて笑った。
−可愛い…
銀時と新八はこぞってそう思った。
怖いほどの白い肌、綺麗な薄青の瞳、母親と同じ橙の髪。
神流は驚く程神楽にそっくりだった。
「…まーせっかく来たんだしな、ゆっくりしてけ。神流…は腹空かないか?」
「うん、お腹空いたー」
「よし、じゃあ銀さんが腕によりをかけて本格派ケーキを作ろう!」
「わーいっケーキ初めて食べるー」
神楽は黙って下を向いていた。
「神楽ちゃんも、お茶飲んだら?姉上がくれたお茶だよ」
「…ありがと、新八」
万事屋の二人は神楽に何も聞かなかった。
けれど内心は神楽に聞きたくてたまらない事がある。
『神流の父親は誰だ』
神楽が万事屋を出ていったのは5年前。
神流はどう見ても4〜5歳なのだ。
となると…宇宙に出てすぐに神流の父親に出会った?
それで出来ちゃった?
あらぬ思想が銀時と新八の脳内を駆け巡った。
「…銀さん、神楽ちゃんの事」
「まぁアイツが何も言わないんだから詮索するのはよそうや…でも…ねェ」
銀時と新八がコソコソ話をしているのも知らず、神楽は1人お茶をすすっていた。