短編2
□許しあうこと5
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帰り道、銀八は重い口を開けた。
「一年前に隣町で少年犯罪があったの覚えてるか」
「少年犯罪…?」
そういえば一年前、近所でなんか事件があった。
内容はよく覚えてはいないが、学校が休校になるほどの騒ぎだったのは記憶に残っている。
「…えぇ覚えてやす。といっても詳しくは知りやせんが」
「一人の男子生徒が六人の生徒を教室で暴行、その内二人は死亡、三人は後遺症が残るほどの大怪我、一人も大怪我をした」
辺りは心地よい風が穏やかに吹いていた。が、その風は銀八の不穏な口ぶりを強調しているようだった。
「確か…殴った生徒は学区でも有名な不良で欲求不満から犯行におよんだ…じゃなかったんですかィ」
「あぁその通りだ。」
やけにはっきりした口調だ。
「…ソイツに妹がいたって事は知ってるか」
「妹…?」
だんだんと話が核心に触れる。そんな緊張感で指先が少し震えた。
頭が自然と先の言葉を予想してしまう。
「妹、…神楽の事だ」
ガクリと膝が折れたような感覚がして思わず倒れそうになった。
じゃあ、さっき会った神楽の兄貴が一年前の事件のーー
「大丈夫か?」
「…大丈夫です」
頭の中で神楽の顔が思い描かれる。