短編2
□許しあうこと5
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「だがそれは表向きの顔だ」
銀八の声にはっと顔を上げる。
「…表向き?」
「あぁ…神楽はいじめられていたんだ」
「い、いじめ…!?」
なんで神楽が…!
「アイツが高校に上がってすぐの事だった。アイツの兄貴の神威はな、学区内でもかなり有名な不良だったんだ。それがクラスの奴にバレて…」
「そ、それって」
「あぁ。単なる逆恨みだな…けど神威の奴も相当暴れてたからな…そうなるのも無理はない、といえば無理はないが」
「だからってなんでアイツをいじめるんでィ!!アイツは関係ないだろ!!」
虚しい叫びが空に響いた。
「…いじめはだんだんと陰湿になっていった。俺はその時神威のクラスの担任をしてて、神楽とも会ったりしてたんだがな」
あぁ…だから神楽は銀八の事を「銀ちゃん」と呼んでいたのか。
つまり兄妹ぐるみの付き合いだったわけだ。
「アイツの家はおふくろさんも亡くなっててな、親父さんも海外を飛び回ってたから昔から兄妹二人で暮らしていたらしい。」
「…そう、なんですかィ」
今は亡き姉上の事が蘇る。
俺もずっと姉上と二人だった。
だから神楽の気持ちが痛いほどわかってしまう。
「…神楽は兄貴に心配かけたくなくていじめの事は言わなかったんですね」
姉上には心配をかけたくなかった。たった一人の家族だからこそ余計な心配などしてほしくなかったのだ。
「あぁ。神楽は誰にも助けを求めてこなかった…だから…あんな事件が起こってしまった」
「事件って…?」
一気に銀八の表情が曇る。
嫌な予感がした