短編
□許しあうこと
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季節はずれの転校生は変わっていた。
「今日からこの学校に通う事になった神楽アル。よろしくお願いしますネ」
神楽と名乗った女は奇抜な髪の色にぐるぐるの眼鏡、というなんとも変な格好をしていた。
…変な奴
「じゃあ神楽は一番後ろの窓際の席。沖田くんの隣な」
「はいアル」
はいアルって…
神楽はガタンと椅子に腰掛け座った。
はた、と目が合い一応軽く会釈をするとどうも、と返ってきた。
おかしい…
大抵の女なら俺の顔を見るやいなや顔を真っ赤に染めて下を向くのだが。
コイツには全くそういった気配がない。
本当、変な奴――
***
それからの俺の日課は神楽の観察だった。
神楽はやっぱり変わってる。
まず変なアルアル口調で話してるし、髪型もチャイナっぽい。
眼鏡の下は深い青い瞳だ。
細っこいクセによく食べて…見てて飽きない。
でも一番変わってるのは性格だ。
何故か友達を作ろうとしない。
いや、友達どころか人と話そうとしないのだ。
クラスでも話しかけたりする奴もいるけど、ほとんど無視。
俺もその内の一人だ。
人見知りなら恥ずかしがって下を向く、とかそういうのではなく完全に無視している。
そのため皆神楽に話しかけなくなってしまった。
でも俺は神楽の事をもっと知りたかった。
「おーいチャイナぁ」
「ぶふっ!!」
昼休み神楽に話しかけると、神楽は驚いたように米を吹き出した。
これは…好反応かもしれない。
「きったねーなァおい」
「何アルかチャイナって…」
「お前チャイナっぽいもん」
げふんげふんと咳き込んだ神楽は俺をきっと睨んできた。
「お前、なんで誰とも話そうとしないんでさァ」
「……」
「…無視かィこのやろー」
神楽は無視を貫くようだがこのまま引き下がるわけにはいかない。
神楽には聞きたい事がたくさんあるんだ。
「っ!?何するネ!!」
ひょいっと神楽の顔を覆っていただて眼鏡を手に取った。
眼鏡の下に隠れていた青い瞳。
ヤバイ…
「ほらっ理由を言わねーと返してやらねーぞ」
「っ返すヨロシ!!うざい嫌がらせしてんじゃねーヨっ」
神楽は俺の頭上にある眼鏡を取り返そうと躍起になっている。
クラスは普段見れない神楽の素を見て驚いているようだ。
「いい加減にしろヨ!!」
「だから早く理由を言えっていってんでィ」
「っ!!この…」
ドカッ!!
「!?っ…て」
突然膝に激痛が…
神楽はふんっと言って眼鏡をとり、かけた。
「て…てめー」
「…一つ言っておくヨ」
神楽は目も合わさずゆっくり言った。
「私に近づくと、不幸になるネ。」