夢のもつれ
□正体
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肩に手をやると、塞がりかけの傷があった。
そう、私は咲夜に銃で撃たれたんだ。
つまり咲夜はこの男の一味であり、さっき言っていた春雨の団員であるという事。
…私、裏切られた?
友達だと思ってたのに…
けど咲夜を責める気にもなれない。
私だって一応春雨であって龍神族を壊滅する、という目的があったのだ。
ターゲットに対して少しの警戒も抱かなかった私が悪い…
「私を人質にしてどうするつもりネ」
「お前を使って神威を誘き出すのさ」
「!?」
なぜコイツが神威を…
双葉は長い髪をなびかせ、ふっと静かに笑った。
「神威は我々が開発した特効薬に打ち勝つ強さを持っていた…つまり神威を手中に収めれば以前にも増した特効薬ができるというわけだ」
「…それで私を使って神威をおびき出すアルか?その特効薬…何に使うのヨ」
「ふっ…身体能力が通常の十倍になる薬だ。これを使い春雨に復讐する」
「復讐…?」
双葉は怒りを露にした。
「そう、春雨は我々龍神族を除け者にし破滅へと追いやった。…挙げ句の果て薬を強奪したのだ!そのお蔭で一族はこんな辺境な土地へ飛ばされ細々とみじめに生き延びているんだ、そう春雨は我々をどん底へ落としたのさ!!」
「……」
そうか…一族壊滅の命令にはこういった理由があったのか、
頭の中に龍神族である咲夜や咲夜の家族が描かれる。
きっとあの家族も目には見えない苦労をしたのだろう。
しかし今はそんな事言っていられない。
ここから抜け出して咲夜に会おう。
咲夜だってきっと春雨なんかになりたくてなってるわけじゃないだろう…
そして謝りたい。
神威の事も春雨の事も――
そして友達でいたいんだ。
「…生憎だけど神威はここには来ないアル。アイツは仲間なんてこれっぽっちも気にしてないはずヨ」
「ふん…どうかな?奴は以前私の息子を手にかけた時手こずっていた。それが薬のためだとわかっているなら興味がないわけないだろう?」
双葉は歯を見せにやりと笑った。