夢のもつれ

□蝶々
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ここはどことなくかぶき町に似ている。

そう、かぶき町も賑やかな町だった。

行き交う人は皆楽しそうでどこかあか抜けていて。


そんな町が大好きだった…



私もかぶき町の女の子が着ているような綺麗な着物を着たかった。

綺麗なかんざしを着けて町を歩いてみたかった。



もうそれは叶わないの…?




視界が霞んできて咄嗟に傘で顔を隠す。


泣き顔なんて、誰にも見られたくないから。



「神楽」


…空気読めよナ馬鹿兄貴


今はとても悪態付ける気分ではなかったので足早に立ち去ろうとする。




だがその瞬間、髪に違和感を感じる。



「…これ?」




髪に手をやると、それは蝶を象った髪飾りだった。


ガラス細工でできていてうっかり力を入れると壊れてしまいそう。




「…何ヨこれ…」


「神楽さ、昔こういうの欲しがってたじゃん。あの時はお金なくて買えなかったけどね。さっき買ったんだよ」


「……な…で…」


「ん?気に入らなかった?」


「…なんで…なんでわざわざ私なんかの為に…なんで…?」



「そんなの」



妹だから





「!?何!!」



目から止めなく溢れてくる。


その正体は涙だ。



「何!?俺なんかした!?ねぇ阿伏兎!!」


「……団長ー俺用足しに行ってくるわ」


「阿伏兎ー」


……


「…ぅぐ…ひ…ぇっ…う〜…」


「あー…何なのこの状況…」






なんで涙が溢れてくるんだろう。


神威なんて大嫌いなはずなのに…


神威は私なんて大嫌いなはずなのに…


どうして涙が出るんだろう。





 
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